いつも『ああ』なのか?
頷いたオルフェに頷き返し、キコリは梯子の強度を確かめるべく軽く揺らしてみる。
たぶん問題ないとは思うが……ゆっくりと梯子を上り、ベランダのようになっている場所へと辿り着く。そうして周囲を用心深く見回せば……やはり、誰の気配もない。
(誰も居ない……? 此処を捨てたのか?)
斧を手に持ち、キコリは近くの家へと向かう。足音は鳴っているはずなのだが、やはり反応はない。
家の扉の前に立ち、ゆっくりとドアを開けて。キコリはすぐに、何の反応もなかった理由を理解する。いや、理解させられた。
「これ、は……!」
乾いた血の跡。明らかにこの血の主は死んでいると思われる大量のソレを見て、キコリは「まさか」と思う。まさか、此処に居たはずの住人は全員殺害されているというのか。
死体が何処に行ったかは分からないし、キコリに何かの縁があるはずもない。
そして、犯人がトロールであるとも限らない。だが……少なくとも、トロールが此処から来たという確信は強まった。
「皆! 大丈夫だ、登ってきてくれ」
キコリが声をかければドドは梯子を、オルフェとフェイムは飛んでキコリの近くまでやってきて、多少の違いこそあれど「うっ」と嫌そうな声をあげる。
「トロールの仕業か……!」
「たぶんな。理由はまあ、邪魔だったからだろうな」
フェイムにキコリは頷き、下を見下ろす。
この湿地帯の水深は不明だが、水の中に何が要るかも分からない状況ではこの樹上の村は便利だっただろう。かなり遠くまで……恐らくは別の転移門近くの安全な場所へ降りられるまで通路は続いている。話し合いをするより制圧をした方が楽だと考え「そうした」可能性は充分に有る。
キコリだって、それしかなければそうするだろう。だから、此処であった何か自体は責める気にはなれない。
問題はそこではない。これを見て、キコリは自分の中の違和感を明確に形にした。
「トロールは……妖精女王があの森に来ると確信があったみたいだな」
「そういうことになるわね。斥候でも放ってたのかしら」
「すまん。毎回のことだがドドには分からん」
「私も分からんぞ!」
オルフェは2人を馬鹿を見る目で見ていたが、キコリを指差してみせる。
「いい? アンタたち2人は、この頭に知恵の代わりに……あー……」
そこでオルフェは言葉を切って、キコリへと振り向く。
「アンタ、知恵の代わりに頭に何詰めてんの?」
「え、今なんで俺こんな目にあってんの?」
「とにかく、コイツでも分かったことを分かってないのよ。それを理解した上で聞きなさい」
「いや待ったオルフェ、今のは俺も納得いかないんだが」
「悪かったわよ。フォローしようと思ったんだけど浮かばなかったのよ」
「そ、うか? それなら……いやダメだろ」
ギャーギャーとやり始めるキコリとオルフェを見ていたフェイムは、ドドを軽く指でつつく。
「あの2人は……いつも『ああ』なのか?」
「ドドも長くはないが、概ね『ああ』だ」
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