危機感が無さすぎ
妖精女王の死と、新しい妖精女王の選定。
それはどうしようもなく不穏な空気の漂うものだ。
トロールの女王候補がどのような相手であるにせよ、今の女王を殺してまで次代になろうとしている勢力の担ぎあげている相手だ。
正直、関わりたくはないというのがキコリの正直な気持ちではある。
だが……キコリはちら、とオルフェを見る。
「まさか」とは思うのだが、オルフェが時代の妖精女王の資格を持っている可能性も充分にある。
身体を大きくする力、そしてユグトレイルの加護。
ハッキリ言って、他の妖精とは大分ズレてきている気もするのだ。
それだけでそうと判断するのは勿論愚かだが、必要なのは妖精女王の件について知っている者……あるいは狙っている者から見てどう見えるか、だ。
ハッキリ言って、オルフェほど「それっぽい」妖精もそうは居ないのではないだろうか?
(だとすると……拙いな。強硬手段に出るような相手だ、口先で納得するとも思えない)
他の候補者を殺せば妖精女王になれるというのであれば、どう説得したところで「殺して確かめよう」という話になるだろう。
妖精女王を殺しておいて、次代になることを諦めるとも思えない。
……つまり、最終的な結末は殺し合いしかない。
「どう足掻いても殺し合い、か。ならやるしかないよな」
「なんかまたしても巻き込まれた感じね……」
「妖精は過激だな。オークの方がまだ平和だとドドは思う」
「そんなことないでしょ。ねえキコリ?」
「……」
「キコリ?」
無言でふいと視線を逸らすと、オルフェはキコリの顔の前に回り込んで顔を掴んでくる。
「きぃこりぃ? アンタもあたしと同意見よね?」
「あ、ああ。当然だろ」
「ほら見なさい!」
「……そうか。それでいいならいいのではないかとドドは思う」
生暖かい目をしているドドだが、そんな3人を見ていた妖精が「はー……」と驚いたような声をあげる。
「本当に仲が良いのだな。正直、この目で見ても信じられん」
「そうか?」
「ヒエッ」
「いい加減慣れてくれよ……」
サッと飛んで離れる妖精に傷ついたように言えば、妖精はなんとも微妙な……目の前にいる猛獣に「食べないからこっちにおいで」と言われた小動物のような顔をする。
「ドラゴンに慣れるとか危機感が無さすぎだ! 死んでから後悔しても遅いんだ!」
「え、そこまで言う?」
「まー、言ってることは分かるわ」
「オルフェまで……」
キコリが傷ついたような表情を向ければ、オルフェは肩を竦めてみせる。
「ヴォルカニオン見てれば分かるでしょ? ああいうのがドラゴンに対するイメージってやつよ」
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