女王たる資格
反乱。その言葉の意味をドドとキコリは思い返すが……いまひとつ、分からない。
「ああ、喜んで手伝うさ。でも、分からない。トロールが妖精の仲間だったとして、妖精女王のグループは別のグループだろ? 何の意味があるんだ?」
「ドドもそれは疑問だ。違う村の村長を殺したとて、それは反乱ではなくただの争いだ」
「妖精はその辺面倒なのよ」
妖精女王。それは役職ではなく「種族」だといっていい。
どういう理屈かは不明だが、妖精女王は常に1人しか存在しない。
当代の妖精女王が死ねば、また何処かに妖精女王が現れる。そして妖精女王は、自然と他の妖精の「上」に立つ存在として他の妖精に受け入れられる。
絶対者ではないが、上位者である……といえば理解も難しくはない。
「とはいえ、簡単に殺そうとか思える相手でもないわ。妖精であれば当然、それに心で待ったがかかるものなんだから。余程強い意思で『殺す』と考えないと出来るものじゃない」
「……その通りだ。故に私たちは油断していた。愚鈍で愚かなトロールといえど、女王陛下には一定の敬意を示していると思っていたのだから」
「その辺はさておいて、トロールが反乱を起こす意味は1つしかないわ」
トロールは妖精の中でも基本的に男性型しか生まれない種族だ。妖精であるが故に巨岩の割れ目などから自然発生する性質を持ち、滅びることはないのだが……だからこそ「妖精女王」にはなれない。だというのに、反乱を起こしたというのであれば……。
「女性型のトロールが、生まれたってことか」
「そういうことになるわね。それもたぶん妖精女王を目指せるような資質を持ってる可能性がある。でも……当代を殺してでも妖精女王になろうとしてるなら、相当にヤバい奴よ」
まあ、確かにそうだろうとキコリも思う。
自分が座る為に、玉座から女王を蹴とばすような者なのであれば……玉座についた後に、何をやってもおかしくはない。
「防ぐにはどうしたらいい? そいつを殺すのか?」
「たぶんそうだと思うけど……分かんない。先代の妖精女王の代替わりの時なんて、あたし生まれてないもの」
「基本的には、その通りだ」
妖精が、そう口にする。つまり殺すが正解ということだろうか?
「妖精女王の代替わりは、全ての妖精がそれを知るという。つまり、私たちがそれを知覚できていないということは新女王は生まれていないということになる」
「何か条件があるってことか」
「ヒエッ……あ、ああ。その通りだ。口伝によれば、女王たる資格を持つ者が複数いるということになる。なら、トロールの候補者を殺せば自然と他の候補者が新しい女王陛下になるはずだ」
それは良いニュースではある。あるが、懸念もあった。
「トロール側が、それを知っている可能性は?」
「分からない。だが……気付く可能性は、当然ある」
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