オルフェのヒール1回分の効果
ポーション。それはキコリにとってもなじみ深いものだが、簡単に言えば傷を癒す薬だ。
特殊な魔法によって作成されるポーションは魔法の薬としては一般的かつ比較的高価なものだ。
キコリもポーションによって何度も救われているが……オルフェ曰く、此処にあるものはキコリが飲んでいた安物、あくまでポーションとしては、だが……とにかくそんなポーションとは比べ物にならないらしい。
「ちょっとした傷なら完全に癒えるはずよ。魔力回復効果は……無さそうね」
「ちょっとした傷っていうのは」
「あたしのヒール1回分くらい」
「それなら結構凄いな」
オルフェのヒール1回分の効果なら、死にかけた時には流石に無理だろうが、そこに至るまでの手前くらいであればどうにかなるかもしれない。
「とにかく凄いものなのだな?」
「ああ。でも……そうなると、此処が廃墟になっている理由は……」
ドドに応えながら、キコリは朽ち果てた建物を振り返る。
此処にこんなものが整備されているということは、少なくとも「此処の住人がいなくなった後に温泉が湧き出た」というわけではないだろう。
此処に回復効果のある温泉があってなお、此処を捨てたということになる。
「普通に考えれば人間の村で、汚染地域になったから捨てた、と考えるべきだけどな……」
「それで合ってるんじゃないの?」
「いや。その後、誰も使わずに朽ちたのはどうしてかな、って思ってさ」
「人間臭かったんじゃないのぉ?」
「それが理由になるのは妖精くらいだろ……」
言いながら「ほんとにそれが理由だったら嫌だな……」などとキコリは温泉に手を浸す。
触れてみると温かいだけのお湯だが、怪我をしていればまた違うのだろう。
「少し汲んでいくか。何かの役に立つかも」
空いていた予備の水袋にキコリが温泉水を入れると、ドドもそれを真似する。
いざという時の手札が増えるのは悪いことではないからだ。
「さて、と。一応他にも調べてみるか。まあ、人間臭いとかそういうアレなら妖精が此処にいるとも思えないけどな」
「そうね」
言いながらキコリは再度振り返って。瞬間、何かがサッと動いて消える。
まるで壁に隠れたかのようなその何かにキコリは気のせいではすまなさい。
何も言わずにそのままダッシュし、廃屋の中に突入する。
「ぎゃ、ぎゃー!」
「妖精!?」
「え、嘘でしょ!?」
「ぬ⁉」
そこにいたのは、オルフェと同じ妖精。
緑の髪と同系色の目。そして身体を鎧で覆った、まるで騎士のような風体の……そんな妖精であった。
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