確かに魔法薬ね
「はずっていうか、身体にいいわよね。身体的にも魔力的にも回復効果があるっていうんだから」
「ドドは知らん。どういう理屈なのだ?」
「あたしだって知らないわよ。土地の魔力が水と混ざって、何らかの形で魔法化して噴出したんだっていう奴もいたらしいけど」
信憑性は低いわね、と言うオルフェにドドは頷きキコリは「どうなんだろうな」と呟く。
魔法のことであれば妖精が気付かないはずもない。
しかし、そんな目に見える効果が出るような現象が魔法以外で起こり得るとも思えない。
となると……先程のオルフェの話の微妙なあやふやさにも説明がつく。
「オルフェ、温泉の本物見たことないだろ」
「うっ、まあ、それは……」
「俺はたぶん、魔法薬みたいなもんじゃないかと思うけどな。オルフェが実際に見たら一発で分かるはずだ。魔法に関しては凄いんだから」
キコリがそう言えば、オルフェは「ま、まあね」と照れたように頬を掻く。
能力的な話ではあるが、キコリから全幅の信頼を寄せられていることがちょっと照れ臭かったのだ。
そしてそうなると、オルフェとしてもなぁなぁでは済ませられない話になってくる。
「そう言われるとあたしもキチンと確認しなきゃいけないわね。モノによっては今後の役に立つかもしれないわ」
「だな」
オルフェとキコリがそう言って匂いの強い方向へと歩いていくと、ドドは「ふむ」と小さく頷く。
(不可思議な関係だ。しかし、羨ましいな。ドドは誰かとああいう関係を築けていただろうか?)
その答えは「分からない」になってしまう。今となっては、ドドの記憶の中にしかない話だ。
だからこそ、ドドは思考を打ち切ってキコリたちの後を追う。そうして辿り着いたのは、朽ち果てた廃屋の1つだった。
何の建物だったのかはもう分からないが、石壁で囲まれたその中に温泉があるのは間違いなく、キコリたちは廃屋の中に入り温泉のある場所へと歩いていき……「へえ」と声をあげる。
そこにあったのは、石垣で目隠しをされた大きな池のような温泉だった。
池ではないと分かるのは、水底にしっかりと磨かれた石が敷かれていたのと、立ち昇る湯気のせいだ。
漂ってくる香りも、相当に濃い魔力を含んでいることが分かる。
「……どうだ? オルフェ」
「驚いた。確かに魔法薬ね、これ。たぶんだけど、地下か何処かに『素』になる何かがあるんだと思うわ。その影響を受けてこうなってるんだと思う」
「じゃあ、持っていけばポーション代わりくらいにはなるか」
「ポーションって人間のアレでしょ? ふざけんじゃないわよ、あんなのよりずっと上よ」
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