朽ち果てた村

 しかし妖精女王を探すうえでの問題は解決するどころか増えている状態ではあった。

 まず、あのゴーストたちは何故デュラハンであるギエンのいる場所に集まっていたのか?

 ギエン自身が原因でないと仮定するならば「妖精女王の危機」という話の意味がかなり剣呑なものになってくる。

 しかし逆にギエン自身が原因だとするなら、一体どういうことだろうか?


「オルフェ」

「ん?」

「ゴーストの件、どういうことだと思う?」


 ゴーストの数は大分少なくなっていた。ギエンを追いかけたのか、もう集まっていたゴーストをあの場でほぼ倒し終わったのか。それもイマイチ判別が出来ない。

 だからこそキコリは歩きながらオルフェにそう聞いてみたのだが、オルフェからは簡潔に答えが返ってくる。


「単純に逃げたんでしょ。ドラゴンの咆哮で仲間がたくさん消え去ったら、どんな鈍感でも逃げると思うけど?」

「あー……いや、うん。そうだな。でもそうじゃなくてだな」

「集まった理由ならまあ……妖精女王関連でしょ。たぶん何かと戦ったのは確実でしょうね。で、妖精がどのくらいかは分からないけど死んだんだと思うわ」


 ゴーストはそれを狙ったのだろうとオルフェは語る。しかし同時に「まあ、妖精のアンデッドがまだいるとは思わないけど」とも付け加える。


「デュラハンが妖精のアンデッドの存在を許すとは思えないし。たぶんあたしたちが行った時には処断済みだったと思うわよ」

「怖いな」

「怖いわよ。デュラハンって、あたしたち妖精ですら言い伝えで聞くような奴よ?」


 基本的に出会う時は死ぬ時。そういう類の相手なのだと、そうオルフェは語る。

 だが……キコリが恐ろしいのは其処ではない。

 妖精女王なる相手のことは分からないが、妖精のことであればキコリも多少は知っている。

 彼女たちは魔法の名手であり、その気になればかなりの戦闘力を誇る種族でもある。

 そんな妖精の……しかも「妖精女王」に率いられ放浪する者たちは、かなり戦闘に慣れているはずだ。

 なのに妖精女王が危機を感じるほどの何かが訪れた。その原因は一体何であるのか?

 分からないが……油断するわけにはいかないだろう。

 今まで以上に注意深く進み、転移門へと辿り着く。そうして潜った先にあったものは、朽ち果てた村と……鼻を突くような、凄まじく臭い匂いだった。


「な、なんだこの匂い……!?」

「むう、臭いな」

「あー。これ温泉じゃない。アンタら知らないの?」

「本で読んだことはある」

「ドドは知らん」


 温泉。確か癒しの魔法効果を持つ場所であると本で読んだ覚えがあるし、その本を読んだ時に「別の世界」の記憶が刺激されたのを覚えている。

 その肝心の記憶を失ってしまったので細かいところは分からないが……。


「身体にいいものだったはずだ。楽しんでる暇はないけどな」

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