妖精女王探し

「それを捨てるとかとんでもないわよ」

「だよな?」

「誰かが拾ったらどうすんのよ。使い方によってはデュラハンが今度こそ殺しに来るわよ」

「分かってるよ。捨てないから。でも念じろとか言ってただろ? 間違って反応しないか?」


 そう、キコリはドラゴンではあるがバーサーカーでもある。

 先程のドラゴンロアにせよウォークライにせよ……その他諸々の戦い方において、かなりの確率で殺意で脳内を満たしているし、戦う時に「殺す」以外の思考はあまりない。

 そんなキコリがこんな「殺したい者がいる時に念じる札」を持っていたら、うっかりデュラハンが……ギエンが来てしまうのではないだろうか?

 とはいえモノがモノだけに、キコリが管理するのが一番安心ではある。


「壊しても変なこと起こりそうだしなあ……持ってるしかないけど」

「というか、さっき言わなかったんだけどさ」

「ん?」

「アレ……かなりヤバい奴よ? 確か指差した相手を殺す魔法持ってたはずだから」


 アンタのブレイクと同じで魔力抵抗できるはずだけど、とオルフェは言うが……なるほど、確かにソレは非常に危険な相手だ。

 キコリのブレイクは相手に触れて発動するが、ギエンのその魔法は指差すだけで発動するというのだから。


「敵とやらには同情するな」

「そうね」

「今の話でドドは思ったのだが、敵を殺したらデュラハンは消えるのか?」

「……さあ?」


 そんなことまで知らねーわよ、と言うオルフェだが……今のドドの話はかなり核心をついていたようにキコリには思えた。

 もし、デュラハンが消えなかったとして。その後妖精女王が危機を感じたら新しいデュラハンは現れるのか否か。もし是であったとしたら、「敵」は相当に絶望的な戦いを強いられるのではないか。

 思わずそんなことを考えてしまうキコリだが、まあデュラハンの敵に回るつもりもない。


「あのギエンって奴のことはともかく、妖精女王が此処に居たことは確定みたいだな」

「ま、そうね」

「それなら俺たちも妖精女王を探してみよう。ユグトレイルからの頼まれごとだし、次にそんな機会がいつ現れるかも分からないしな」


 妖精女王がすぐそこにいるかもしれないのに、放置して別のことをやりに行った。

 そんなことが万が一ユグトレイルの耳にでも入れば、かなり嫌な顔をされるのは間違いない。

 それにキコリとしても「妖精女王」なる存在に会ってみたいという気持ちもまあ……あるにはある。

 あんなデュラハンとかいう存在が現れるくらいに危機に陥っているというのであれば、それを見捨てるのもまた違う。

 だからこそオルフェとドドも同意して、妖精女王探しが再開されたのだった。

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