簡単な帰結

「……いや、普通に意味が分からない」


 殺せば死ぬけどまた現れる。そう説明されて理解できる者がどれだけいるというのか?

 ただ、シャルシャーンと似ているというのをヒントにキコリは考えてみる。

 根が同じで、記憶を共有。殺しても現れる。それは、つまり。


「ああ、そうか。どっかに『本体』があるんだな? 今此処に居るお前は、そいつが生み出したものなんだ」

「然り! そして私は妖精女王の危機を察知し生まれ出る。しかし困ったことに、それがどういう状況かまでは分からないのだ」

「本体と共有してないのか?」

「残念ながら共鳴のようなものでね。実際の状況はこうして出て来てみなければ分からない」


 何とも不便なものだ、とキコリは思う。つまるところ妖精女王が危機になると、自動的にデュラハンがその場に現れて敵を殲滅する。

 しかし敵がどんな相手で妖精女王がどういう状況かについては実際に出てみないと分からない。そういうことだ。

 そこまで考えて、キコリに1つの疑問が浮かぶ。


「ちょっと待て。それならこんな所で話をしてる場合じゃないんじゃないか?」

「違うわよキコリ。コイツは『話してる場合』なのよ」

「は? それって……」

「ドドたちを敵と考えている、ということか?」


 キコリたちは同時にギエンを見て……ギエンは兜の奥の眼光を笑みの形に歪める。


「然り」

「待てよ! どうして俺たちが!」

「簡単な帰結だ。妖精はともかくドラゴンとオークだ。妖精女王が危機を感じたとしても無理のない話だ……故に貴殿たちを見極めさせてもらっていた」


 もらっていた、というのは……すでにその見極めが終わったことを示している。

 ならば、その見極めの結果はどうなのか。


「貴殿たちは『違う』な。疑ったことは謝罪するが、これも我の職務。勘弁してくれたまえ」


 ギエンが指を鳴らせば、黒い靄を纏った馬が何処かから歩いてくる。

 手慣れた動きで黒馬に乗ると、ギエンはキコリたちに再度の視線を向ける。


「我は妖精女王の捜索に戻ろう。それで、今回の侘びだが……受け取りたまえ」


 ギエンの投げた何かをキコリが受け取ると、それはどうにも不吉な魔力を放つ五角形の木札のような何かだった。

 正面に大きい文字で何かが書かれているが……キコリには読めない文字だ。


「これは?」

「殺したい者がいるなら、念じたまえ。1度に限り馳せ参じよう」

「うわっ! 待て、返す!」

「断る。ではさらば!」


 馬で何処かへと器用に木々の間を抜けて走り去っていくギエンを見送ると……キコリは手の中の札を見て溜息をつく。


「……どうするコレ。捨てるわけにもいかないし」

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