殺せば死ぬのだから

「……答える前に。お前は誰だ? どうして妖精を探している?」

「なるほど、そういえば自己紹介もしていなかったか」


 首無しの騎士はそう笑うと……笑い声が確かに聞こえてくる。

 それも、抱えている兜からだ。兜の奥からは眼光らしき光が点滅していて、不気味さを増幅させている。


「ならばご挨拶しよう。我はデュラハン。名はまだ無いが、此処で決めよう。そうだな……ギエン。デュラハンのギエンだ。どうぞよろしく、奇妙なる組み合わせの者たちよ」


 恐らく騎士の礼であるだろう動きをするギエンに、キコリは多少躊躇いながらも挨拶を返す。


「俺はキコリ。死王のキコリだ。この2人は俺の仲間だ」

「ああ、その名乗り。なるほどドラゴンか。随分と物騒な二つ名だ……それでキコリ。先程の質問についての返答や如何に」

「この1つ先の領域でオークと妖精が争ったのは聞いている。それ以上は知らないが、俺たちの探している妖精じゃないかと思って此処に来た。それで、お前は?」

「ふむ……いや、少し待ってほしい」


 キコリの質問をギエンはそう遮り、少し黙り込む。兜の奥の眼光も何かを考えるように細められるが……しばらくするとギエンはキコリたちへと視線を向ける。


「突然だがデュラハンについて貴殿たちはどの程度ご存じだろうか」

「え? いや、知らない」


 そんなモンスターは確か本にも載っていなかった、とキコリは思い出す。

 見た目からするとアンデッドや生きている鎧の類にも見えるが、どうもそうではないようにも思える。しかしそうなると、デュラハンとは何なのだろうか?


「知ってるわよ」


 そんな中、オルフェがそう声をあげる。


「妖精の騎士にして殺戮者。一応妖精の仲間。そうよね?」

「大体あっている」


 あっているのか、とキコリとドドは警戒心を強くする。

 妖精の騎士はともかく「殺戮者」のワードはあまりにも危険すぎる。


「正確には妖精女王の敵対者を殺戮する者、ではある。ハッキリ言って我が生まれるのは異常事態だ。前任者は200年以上前に妖精女王を誘拐しようとした街を滅ぼしたと記憶にはあるが」

「記憶? 生まれたばかりなんだろ?」

「然り。されどデュラハンとは根を同じくする妖精だ。ほら、ドラゴンにもいるだろう。いつでも何処でも時代も空間も無視して現れるような奴が」

「……シャルシャーンか」


 シャルシャーンの同類であるとなれば、それは不死身に近い。関わりたくない度合いが上がっていくのだが……そこでデュラハンは笑う。


「まあ、我はあそこまで無茶苦茶ではないがな。殺せば死ぬのだから。ただちょっと、殺したくらいではまた現れるだけだ」

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