俺も随分強くなった

「そうね。ネクロマンサーのは人形だって説明したばかりでネクロマンサーに例えるアンタの豪胆さには感心するけども」

「そこは別にいいだろ……」

「ダメ。許さない」

「ええ……?」


 両手で「バツ」を作るオルフェだが、すぐに「それはさておき」と話題を変える。


「トルケイシャのやったようなこと、っていう意味であれば可能性はあるわね」

「……ゴーストを吸収するってことか?」

「そうね。出来るのかは知らないけど」


 魔力生命体だから魔力として吸収できるのか。その答えは「分からない」だ。

 自分を乗っ取る能力を持った相手を自ら迎え入れるなどということが、どれほど愚かであるかは考えるまでもない。

 たとえばソレをやった者が「俺はゴーストの吸収に成功した」と宣言したとして、その場に居た者のうちどれだけが信じられるだろう?

 これは悪魔憑きが「俺は悪魔に打ち勝った」と宣言するのと似ていて「お前はそう言うが信じられない」となるのが世の常だ。

 事実、オルフェたち妖精もゴーストの類を見たら即殲滅するのが常識だ。

 魔力生命体相手に何かをしようと考えるのは、それ自体が致命的な話なのだ。


「しかしまあ、そういうことなら話は簡単になってくるな」

「え?」

「どういうことだ?」


 キコリにオルフェとドドは疑問符を浮かべるが、すぐにオルフェが「まさか」という顔になる。


「誰かが何かを企んでいるにせよ、いないにせよ……ゴーストを片っ端から倒していけば心配はなくなる。そうだろ?」

「うーわ……そりゃそうかもしれないけど」

「どの道、放っておいてもあのオークの村にも被害出るかもしれないしな。此処で倒しとくのもいいだろ?」

「確かにな。ドドも賛成しよう」


 頷くドドを見て、オルフェも大きく溜息をつく。まあ、実際ゴーストの大群相手ならそれが無難なのだ。

 このゴーストたちが何処かに溢れ出れば、それだけで相当な騒ぎになるし魔力が低いオークなどイチコロの一網打尽だろう。

 それが別の騒ぎにつながる可能性を考えれば、此処で叩くのは必然……ではあるのだが。


「なんなのよ。次から次へと厄介ごとが……」

「でもまあ、それでも大分気楽だよ」

「はあ?」

「オルフェが居て、ドドが居て。俺も随分強くなった。こんな状況でも、まあたぶん死なないだろうと思えるんだ」

「呆れた」

「フッ」


 オルフェは本気で呆れたような視線を向け、ドドは小さく笑う。

 確かにまあ、あのトルケイシャに比べれば随分と小さな問題だ。そう思えてしまう。

 

「やろう、2人とも。とにかく歩き回って、襲ってきたやつを全部ぶちのめして回るんだ」

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