ダメだ奴等は

 そうしてドドを通して聞いた「事情」は、想像以上にアレなものだった。


「えーと……つまり」

「普通の妖精より大きくてキラキラしたのがたくさんの妖精引き連れてたから」

「侵略だと思って襲ったそうだ」


 キコリたちは顔を見合わせると、互いにコメントを求めるように視線を交わし合い、やがてオルフェが全員の気持ちを総括するように声をあげる。


「馬鹿ね。とんでもない馬鹿よ」

「……だな」

「ドドも擁護できない。だが全てのオークがそうではないというのは分かってほしい」


 つい最近……時期的には、トルケイシャのせいでダンジョンが更に変化した頃だろう。

 その時期に転移門を抜けて、目立つ妖精に率いられた妖精の一団が現れたのだという。

 やけに目立つその集団はワイワイと騒ぎながらオークの集落を指差して何か言っており、その言語をオークたちは理解できなかったが、妖精のことだから「村を焼こう」的なことを言っているのだと理解したのだという。

 だから魔法を使われる前に先手を打ったと、まあそういう話らしいのだ。


「気持ちは分かるけど、先手打って襲ったら反撃されるよなあ。それで恨みに思うってのは……」


 キコリ自身、不意打ちやゲリラ戦術は結構やってきただけに否定はしないが、それで妖精全体を恨みに思ったのでは、ただの逆恨みだ。

 しかしまあ、気持ちは分かるのだ。気持ちは。

 たとえばオルフェやアリアがゴブリンに挑んで殺されたと仮定した場合、キコリはゴブリンを根絶やしにしてやると思う可能性も、まあそれなりにある。というか、考えるだけでゴブリンを憎くすら思う。


「……一応聞くけどキコリ、今何考えてんの?」

「オークの気持ちを理解しようとしてる」

「やめときなさいよ、アンタ単純なんだから」

「まあ、そうだけどさ」


 とにかく、事情は理解できたしドドがオークたちに説教しているようなので問題自体は解決しそうだが……。


「此処にドド置いていくの、なんか嫌じゃないか?」

「まあ、アタシのあの馬鹿どもの中に放り込むのはどうかと思うけど」

「初めてちゃんと会話したオークがドドだったってのもあるけど、俺……オークに対しては強くて狂暴ってイメージしかなかったのも事実なんだよな」

「大体あってるわよ。アレが普通のオーク」

「そっかあ……」


 しばらくすると「ダメだ奴等は」とドドが大股で歩いてくるが……どうやら交渉が決裂したらしい。


「戦士のプライドがどうというばかりだ。ドドも戦士ではあるが、理解できん」

「ま、そんなもんだってことだろ。此処はダメだ、別の集落を探そう」

「致し方ないな」


 ちょっと嬉しそうなキコリをオルフェは呆れた顔で見ていたが……やがて肩を竦めて、2人の隣へと飛んでいく。

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