それがオークの文化であるのなら
「グゲッ」
膝から倒れたオークに裏拳を喰らわせると、キコリはその手から鉄棍を奪い取る。
棒のようなソレは、以前クーンが使っていたものに比べればオークの体格に合わせた長く太いものだが……ひとまず問題はない。
何故なら、キコリには棒術の心得などあるはずもないが……。
「ゴゲアッ!」
「ガッ!?」
それだけ長くて太い棒であれば、振り回してぶん殴るだけで身長差を埋めることが出来て丁度いいからだ。
斧を振り回すよりは怪我人も少なくなるし、良いことづくめだ。
如何に兜で守っていても、鉄棍で頭をガンガン殴られて何も感じないはずがないし、兜で守っていなければ一撃でグラつくほどの衝撃を受ける。
それだけではない。キコリが以前得たフェアリーマントの能力は今も発揮され、オークですら驚愕する程の跳躍を可能とさせている。
ブオンと風切り音をたてて振るわれるキコリの鉄棍がオークに叩きつけられる様を見れば、かつてオーク相手に命懸けであった少年と同一人物と思う者は居ないだろう。
そして何よりも、ドドの着用している悪魔の装備もまた、此処に居るどのオークの装備よりも良いものだ。
魔法を弾くという特殊性をさておいてもなお、鉄より数段勝る頑強さ。
そんなドドのメイスに殴られれば鉄の鎧をヘコませながら吹っ飛ぶし、シールドチャージも同じオークを弾き飛ばす。
あのトルケイシャに比べれば、オークの同胞程度などドドは何も怖いと思わない。
おまけに殺さない戦いだ……遊びのようなものですらある。
「ガッ……」
やがて襲ってきたオークの最後の2体をキコリとドドが同時に殴り倒せば、同時に「ふう」と息を吐く。
「おつかれ、ドド」
「ああ、おつかれだキコリ」
互いに振り向きもしないままに拳をぶつけ合い、キコリは笑う。
「やっぱりドドは強いな。抜けるのはやめにしないか?」
「そう言われるのは嬉しい、心が揺らぐな」
そんなことを言い合うと、ドドはオーク語で倒れたオークたちに何かを呼びかける。
よろよろと顔をあげたオークたちの顔は不満そうだが……ドドが一喝すると、舌打ちしながらも座り込む。
「納得してくれたのか?」
「戦士として負けたのだ。納得できずともするのが定めだ」
「信じていいのか分かんない感じね」
オルフェの言葉にキコリも頷きそうになってしまうが、それがオークの文化であるのならひとまずは大丈夫なのだろう。
「それなら事情についてもっと詳しく聞きたいな。どういう事情があって妖精と殺し合いになったんだ?」
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