オークの村

 トルケイシャとの戦いから、数週間が経過した。

 キコリたちは幾つかの戦いを経て、オークの集落へと辿り着いた。

 豊かな草原と川のある、穏やかな環境の集落だ。

 しかし……キコリはそれを見てヒクッと口元を引きつらせてしまった。

 あまりにも見覚えのある、というか……キコリが以前クーンたちと共にゲリラ戦術で住人を襲ったオークの村とあまりにもソックリだったからだ。

 まさかそのものではないだろうが、環境は似ている。


「どうした、キコリ」

「あ、いや。以前オークの村の住人相手にやらかしたことがあって……似てるなって」

「そうか。だがオークの村は大体こういう場所に作られる」

 

 ドドの説明によると、ドドのような特殊な環境を必要とするオークでなければ生活の基盤を整えやすい川の側などに村を作ることが多いのだという。

 水があり、作物や獲物を調達しやすい、そんな場所だ。オークは身体能力が生まれつき高いので、過ごしやすい場所に住んでも敵からの防衛も難しくなく、然程の問題がないのだ。


「まあ、問題はないだろう。大体のオークは人間の顔の区別などつかん。ドドは2人の顔を覚えたが」

「そっか、ドドは凄いな」

「つーか、アンタの『やらかした』って皆殺しとか?」

「そうなのか?」

「いや、そこまでじゃない。ちょっと潜んで移動しながら見つかる前に襲い掛かったっていうか……いや、それより俺を何だと思ってるんだよ」

「「バーサーカー」」


 オルフェとドドがほぼ同時に放った台詞に「まあ、そうだけどさ……」とガクリと肩を落とす。


「つーか、そもそも当時の俺はそんなことできるくらい強くないよ」

「その台詞がもうバーサーカーなのよねえ」

「ドドもフォローが出来ん」


 2人に言われてキコリも「……確かに今のは何か言い方が悪かったな」と呟く。

 さておき、そういうことであればキコリとしてもあまり気負わずに行ける、のだが。

 村に近づいていくと、キコリたちは村の入り口にいたオークがキコリたちを見つけて何か叫んでいるのに気付く。

 何を言っているかは……オーク語なのでキコリにもオルフェにも分からない。


「妖精だ、と言っているな」

「え? あたし?」

「まあ、妖精はなあ……結構ヤンチャだもんな」


 キコリに言われオルフェはウグッと声をあげる。

 まあ、キコリとの出会いも結構乱暴だったので否定しようがない。

 しかし、言いながらもキコリには思い出すことがあった。

 以前、守護のユグトレイルに頼まれた……『妖精女王』のことを。

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