竜形態
キコリが、地面を蹴る。爆発を起こしたのかと錯覚する程凄まじい音をたてて、トルケイシャへと斧を振るう。
「愚かな! やっていることが何、も⁉」
トルケイシャの展開していたバリアを易々と切り裂いて、キコリの斧が迫る。
「う、おおおおおおお!?」
トルケイシャは素早くバックステップすることで回避し、魔力波動を放つ。
だが、それはキコリの眼前で消え去り、そのままキコリは再度突っ込み斧を振るう。
「が、がああああああ!?」
回避して、それでも腕を切り裂かれたトルケイシャは修復する。そう、トルケイシャは瞬時に自分の身体を修復できる。
それは、トルケイシャ自身が強大なアンデッドと化したが故だ。たとえ殺されるような傷を負おうと、トルケイシャは自己修復できる。
アンデッドとしての強みを強化した存在……いわば、それがトルケイシャだ。そういう意味では不死に近い。だが、それでも不死ではない。
だから、シャルシャーンはオルフェをさりげなく守るように立ちながら一人呟く。
「トルケイシャは死を束ね、死から限りなく遠ざかった。合体アンデッドとか言ってもいいけど、まあ……過去に似たような発想をした奴はいた。死んだけどね」
「アンタ、キコリに何したの」
「おや、トルケイシャには興味なしかい?」
「ないわよ。キコリに何したの」
キコリはトルケイシャを完全に押していた。切り裂き、叩き、砕き……再生するトルケイシャを、どんどん押し込んでいく。
その様子が……いつも以上にバーサーカーじみていて、オルフェは言葉に出来ないような不安を抱いたのだ。
「心配は要らないさ。アレはキコリの……そうだな、『竜形態』とでも呼ぼうか。ドラゴンとしての力を存分に振るう為のものさ」
竜形態。そのネーミングやら諸々はどうでもよかった。オルフェは今が戦いの最中だということなど忘れてシャルシャーンに噛みつくように近寄る。
「……アンタ。それがどういうことか、当然分かってるんでしょ」
「分かってるとも。ドラゴンとして思う存分戦えば、キコリは間違いなく死ぬ。あの鎧はその確率を下げる為の保護具と言ってもいいかな。ま、それでも7割死ぬけど……今回に限ってはボクがいるからね」
「この……っ!」
殺意すら籠めるオルフェの瞳を、シャルシャーンは真正面から見つめ返す。
「いいね。ボクに真正面から殺意を向けられる、その度胸。それがボクがその気になったら消えて失せる儚いものだとしても、充分に評価できる」
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