ドラゴンとは何か
「また……また私の邪魔をしに来たのか! そんなに自分と同じ高みに登られるのが嫌か!」
叫ぶトルケイシャにシャルシャーンはキョトンとした顔をして……やがて、笑い出す。
「ふふふ……はは、あはははははははは!」
「な、何がおかしい!」
「全部さ! ボクと同じ高み⁉ 君が⁉ おいおい、いつの間にギャグセンスを磨いたんだ!?」
ひとしきり笑うと、シャルシャーンは「有り得ないだろ」と真顔で言い放つ。
「力が強いだけでドラゴン? そんな理屈が通るはずがないだろう。ドラゴンとは『資格』だ。君にはそれがない。ただ世界を崩すだけのゴミに過ぎない」
「なっ……!」
そう、ドラゴンとは「資格」持つ者の称号だ。ドラゴンクラウン。それを持たない者が幾ら力を誇ったところで、偽物でしかない。
戴冠しない王など居ないように、ドラゴンクラウンを持たないドラゴンなど居ない。
たったそれだけの、簡単な理屈。そして、ドラゴンクラウンを持つ者は世界から魔力を自由に引き出せる権利を持つ。
勿論、それに見合う身体を持っていなければ、相応の代償は伴うが……。
「キコリ」
絶句するトルケイシャをそのままに、シャルシャーンはキコリを見下ろす。
「君は本当にダメな子だなあ。人間ぶるのを、さっさとやめてしまえばこんなに痛い思いをしなくて済むのに」
「……無理だ。俺はまだ、決められない」
「だろうね。だから君は自分に鍵をかけた」
それが何を意味しているのか、オルフェには分からない。
しかし、それはたぶん、きっと。
「私を無視して……何をゴチャゴチャと!」
トルケイシャの放つ魔力波動を、キコリから放たれた魔力が打ち消す。
同じ魔力のぶつかり合いであれば、より強い方が勝つ……その、絶対不変の論理のままに。
「さあ、鍵は外れた。やりまえよ、キコリ。これは君の仕事なのだから」
キコリが、立ち上がる。その身体を、ドラゴンメイルが覆って……その手に、斧を握る。
だが、違う。いつもとは、違う。ドラゴンヘルムはキコリの顔を全て覆い、まるで人型のドラゴンであるかのように……けれど、その姿はトルケイシャのそれとは何もかもが違う。
同じ竜頭でありながら、明らかに「違う」と分かるのだ。
それは、その身体から放たれる独特のプレッシャーのせいだろうか?
だが、オルフェには分かる。アレは、ドラゴン特有のプレッシャーだと。
他の全てを屈服させようとするかのような、最強生物としての証。それが今、キコリから強く放たれているのだ。
「……ドラゴン」
トルケイシャの口から放たれたその言葉。
ドラゴンを僭称する者ですら理解できる「ドラゴンとは何か」の答えが、そこにあったのだ。
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