久しぶりだね、トルケイシャ

 オルフェの手の中で完成したフェアリーケインはトルケイシャの頭上に移動し、無数の光線を連続で放つ。


「ぐっ、がっ……!」

「滅びなさい」

 

 キュドンッと、凄まじい音を立てて放たれた極太の光線がトルケイシャを吞み込んで。

 しかし……反撃のように放たれた紫色の魔力波動がフェアリーケインにぶつかり……そして、大爆発を起こす。

 そして、その爆発の余波の中でオルフェに向かって突きだされたトルケイシャの手を、キコリの斧が迎え撃つ。

 ギイン、と響く音と、弾かれたトルケイシャの手。無傷に見えるトルケイシャはまた再生したのだろう、その顔は骨でも分かる程の歓喜に彩られている。


「素晴らしい。屍王となる前の私であれば成す術なく滅ぼされていただろう」

「アンタ、アタシのフェアリーケインを……!」

「ああ、壊した。素晴らしい魔法だが、いささか精密に過ぎる。妨害し自壊に導くのは、然程難しい話ではない」


 キコリの打撃を受け流し、トルケイシャは無数の魔力弾でキコリを打ち据える。


「ミョルニル!」

「効かんよ」


 キコリの電撃纏う斧を真正面から受け止め、トルケイシャは再度魔力弾の群れでキコリを吹き飛ばす。


「その魔法も把握した。だが、今の私の魔力であればソレが通じない程度に身体を強化するのは楽な話だ」

「グングニル!」

「新しい魔法か。けれど、無駄だよ」


 トルケイシャの展開したバリアが、キコリのグングニルを受け大爆発を起こす。

 だが……当然のようにトルケイシャは無傷。そして……キコリはミョルニルを、今度はその身体に纏っている。


「……ほう! そういう使い方もできるか。しかし」


 飛ぶように跳んだキコリが、トルケイシャのバリアを砕いて……しかし、トルケイシャもまた「、ミョルニル」と唱えその身体に電撃を纏う。

 そして、跳んだトルケイシャはキコリを吹き飛ばし、その身体に電撃を流し込む。


「……!」

「ハハハハハッ! 把握したと言っただろう! 真似くらい簡単に出来るとも!」

「キコリ!」


 叫び飛んでいくオルフェを見ながら……トルケイシャは、ドドの振り下ろしたメイスを受け止める。


「それも無駄だ」


 振り返り裏拳をドドへとトルケイシャは叩き込み、ドドは血を吐きながら転がっていく。

 万能感。今のトルケイシャを支配しているのは、まさにそんなものだ。


「見たか! これが私だ! 不便な身体を捨て、私が完全にコントロールできる身体を手に入れた、その成果がこれだ! 今の私は最強種たるドラゴンにその名を連ねたのだ!」

「ドラゴン……ですって?」


 睨みつけるオルフェに、トルケイシャは鷹揚に頷く。


「その通りだ! 知っているかね、ドラゴンはドラゴンという種でありながら多種多様な姿を持つ! そう、ドラゴンは……『なれる』ものなのだ! 既存の殻を脱ぎ捨てドラゴンへと至る! すなわち、私はドラゴンなのだ! そうして、君を食ってより高みへと……!」

「ああ、それは無理さ」


 聞こえてきた声は……倒れているキコリの、その後ろから。

 何もない場所ににじみ出るように現れた「それ」を見て、トルケイシャは驚愕に目を見開く。


「その、声は……シャルシャーン!」

「その通り。久しぶりだね、トルケイシャ」

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