個人的な理由

 そうして2日がたって。ドドは想像以上に立派な武具を作り上げていた。

 悪魔の金属を作って鍛造した大型のメイスと、兜、鎧一式……そして大型の盾。

 どれも立派なモノであり、オークという種族の鍛冶技術をも示すものだった。


「待たせてしまってすまない」

「お互い納得済だろ? それより、凄いのが出来たな」

「ああ、これならドドはもっと戦える」


 見た目からして良い性能であると理解できる武具は、悪魔の金属を使うことで魔法に対する耐性も得ることになった。

 魔法を使わない重戦士のドドであれば、最適な武装と言えるだろう。

 この2日間、悪魔の町を調べたが……植物園に生えていた、よく分からない果物くらいしか新しく見つかるものはなかった。

 一応食べられそうではあったのだが、オルフェがかなり本気で嫌がったので収穫はしていない。

 曰く「何か凄い嫌な気配がする」とのことらしく、オルフェのその勘をキコリは疑ったりはしない。

 つまり、此処での収穫は安全な休憩と水、そして新しい装備……そして地図ということになる。


「じゃあ、行くか」


 途中で出会うメタルゴーレムが襲ってくることもなく、キコリたちは地下を歩き……やがて、転移門の前まで辿り着く。


「さて、と。この先は何処に繋がってるかな」

「分かんないけど。もうこういう場所はごめんよ」

「ドドも同意する。やはり地上で生きてこそだ」


 オルフェとドドの言葉に笑いながら、キコリは転移門を抜ける。

 そうすると、そこは……あの、紫色の草原だ。


「此処は……あの場所か」

「あら、ようやく着いたのね」

「ネクロマンサーの草原か」


 少し遅れて転移門を潜ってきたオルフェとドドもすぐに気付いたようで、オルフェは不敵な……ドドは怒りを耐えるような表情を浮かべる。


「丁度いい。ドドの新しい武器を叩き込んでやる良い機会だ」

「とはいえ、前回のことを考えるとソレ着てても不安はあるわよ」


 悪魔の金属は魔法を弾きはするが、許容量を超えれば普通に貫かれてしまう。、

 あのネクロマンサー……「屍王のトルケイシャ」の放った魔力は、凄まじいものだった。

 悪魔の鎧を着ていたところで、防ぎきれるかは分からないのだ。


「それでも、ドドは奴を殴らなければならんのだ。村の仲間の為、そしてオークとしての意地の為。必ず奴を殴る。そうしなければ、ドドは同胞に顔向けできないだろう」

「協力するよ、ドド。俺にもアイツと戦わないといけない理由がある」

「一応聞くけど、その理由って何?」


 オルフェが「一応」と言いながらも真剣な表情で問いかけて。

 キコリは、軽く頬を掻きながら困ったように答える。


「うーん……まあ、なんていうか。個人的な理由だよ。でも、やらなきゃいけないんだ」

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