相棒としての仕事
「……これね」
「これだな」
オルフェとキコリが、ルートを羊皮紙に書き出しオーブのルートと照らし合わせていく。
オーブにはルートを外部に出力してくれるような機能はないので、自分で地図を描く必要があったのだが……これが結構手間だった。1つ間違っていれば全部意味が無くなるのだから、中々に辛い作業だ。
「この地図があれば此処を抜けられる、けど。意外に不便なんだな、このオーブ」
「そりゃ悪魔は壁抜けすればいいんだから」
「そういえばそうだったな……」
言いながらキコリはその場に仰向けに倒れこむ。鎧がガチャンと音を鳴らすが、気にもならない。
身体を使うよりも疲れた気がするが、まあ結果としてはまたしてもオルフェの頭の良さに助けられた形になる。
「そういえばさ」
「ん?」
「大地の記憶とやらがデモンを生むとして、此処に居た悪魔はたぶん「上」で全滅したんだよな?」
「たぶんね」
「でも悪魔は壁を通り抜けられるし、此処にも地面を通り抜けて到達できる。なら、悪魔のデモンも此処に来られるはずじゃないか? なんで来ないんだろうな?」
言われて、オルフェは思わず「あっ」と声をあげてしまう。
確かにそれはキコリの言う通りだ。
悪魔がデモンとなってもその性質を維持しているのであれば、此処に来ることなど簡単だ。
それなのに1体すら来ていない。それはつまり……此処には来られない事情があることを意味している。となると、それは……。
「上の騒動は恐らく、デモンとなっても戦いあうような何かなのは間違いないけど。悪魔と、その敵である何かの戦いなのは間違いないでしょうね」
それが「何」であるかはまだ確証は持てないが……もしかすると「人間」もデモンになるのかもしれない、とオルフェは思う。そうなると、かつて此処を人間の言う「汚染地域」に変えた人間のデモンが上に居て、かつての戦いを再現しているということになるが……それ自体をあのドラゴン、シャルシャーンは危惧しているようには思えなかった。
かつて世界を歪ませた戦いと同規模のものであるだろうに、どう違うというのか?
それはオルフェにはまだ分からない。分からないが……何か、大事なことであるようにも思えた。
「デモンは理性とかあるように見えなかったけど、もしかしたら逃げるっていう発想自体が消えるのか?」
「かもしれないわね。だとすると、助かったわね?」
「まあな。此処には悪魔の武器も溢れてるわけだし」
キコリとそう言い合いながら、オルフェは思う。
魔法的な話であれば、キコリには読み解けない。ならばオルフェがやるしかないだろう。
あのシャルシャーンが素直に教えるとも思えないし……何よりこれは、キコリの相棒としての仕事であるだろうから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます