怪しいマジックアイテム

「……箱? また素材とか部品とか、か?」

「まあ、普通に考えればそうでしょうね」


 キコリが近づき箱を1つ開けてみると、やはりインゴットが詰まっている。

 此処で長期に過ごすのであれば、やはり修理用の金属の備蓄は必須ということだろうか?

 まあ、どのみち今のキコリたちに必要なものではなさそうだ。


「こっちの箱もか?」


 隣の箱を開けてみると……そこに入っているのは、インゴットではない。

 大量のナイフが鞘に入った状態で詰められていた。試しに鞘から引き抜いてみると、あのメタルの輝きが見える。


「悪魔のナイフってところか。随分武器を貯蔵してたんだなあ」

「自衛の手段にしては随分と迂遠だけど……持ってくの?」

「ああ、数本持ってく。何もなかった頃は武器投げるのも選択の内だったしな」


 必要なら斧だって投げたし……と言いかけて、キコリは言葉を止める。


「……今も結構斧は投げてるな?」

「アンタのミョルニルはそういう魔法でしょうが」

「そういやそうだった……」


 笑いながらもキコリなナイフをベルトにつけたり荷物袋に放り込んだりしていく。

 実際役立つ場面が来るかは分からない。なにしろ「魔法を弾く」悪魔の金属は、キコリのミョルニルとは相性が最悪だ。

 それを考慮しても鎧を着ているのはトルケイシャが魔法に長けているからであって、そうでなければ着込む理由はない。


「よし、行くか。此処には他に必要なものはなさそうだ」

「そうね」

 1階の鍜治場以外の部屋を探索するが、細工の為の部屋などがあるだけで、完全に加工の為の部屋であることが分かる。

 唯一趣が違ったのは台所らしき場所だが、特に何か食糧が保管されているわけでもない。

 そうしてさらに階段を上がり上階に登ると……扉を隔てた先に1つの大きな部屋があった。

 中にあるのは、幾つかの机と椅子、そして中央に安置された大きな球状の水晶だった。

 恐らく何かのマジックアイテムであるだろうことは分かるが、それ以上の何も分からない。


「オルフェ……これ、何だと思う?」

「分かんないわ。でもたぶん、此処に保管しなきゃいけない程度の何かではあるんでしょうね」

「んー……防衛機能とか、か?」

「分かんないわよ。動かすにもリスクがあるし、動かさなくて済むならその方がいいわね」


 探しているのは地図なのだから、それさえ見つかれば怪しいマジックアイテムなど触れる必要すらない。

 だからこそ、キコリとオルフェは部屋の中を片っ端から探していくが……地図どころか書類の1枚すら、見つけることは出来なかったのだ。

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