此処に加工場があるなら

 他の家同様に触れれば扉は開き、同時に中に明かりが灯っていく。

 広いその場所には大量の人形と、金属のインゴットが積まれていた。

 それが人形のパーツであることは明らかで、隅の方には代替パーツと思われるものも置いてある。

 人形の頭が箱の中からこちらを見ているのは中々に不気味で、キコリは思わず視線をそらしてしまう。


「確かに此処が人形の製造場所ってことで……ん?」


 キコリが視線をそらした先。そこにある物を見て、キコリは近寄っていく。


「どしたの、キコリ……って、あっ」


 オルフェも気付き近寄ったその場所にあったものは、様々な武器や防具、道具類だった。

 試しに剣を鞘から引き抜いてみると、どうやらメタルゴーレムと同じ素材で出来ているようだった。

 鎧や兜、グリーブなども全てそうだ。つまりこれらは魔法をある程度だが弾く素材で出来た武具ということであり、恐らく防衛都市に持って帰ればかなり高値で売れる類のものであることは間違いない。

 そのくらいに良い武具ではあるが……今のキコリには、正直にいえばあまり必要ではない。

 今の武具は修理不要でいつでも出し入れできる。それを考えれば、修理の必要なものを持ち歩く理由がないからだ。


「着ていけば?」

「え? なんでだ?」

「なんでも何も。アンタ、魔法に弱いじゃないの」


 まあ、否定はできない。元々のキコリの性質を反映した今の鎧は物理的な防御力はさておき、魔法にはそんなに強くない。勿論どうにか出来はするのだが、少しばかり無理が要るのも事実だ。

 そして何より今回の相手は魔法が得意なトルケイシャだ。魔法を弾く悪魔の鎧は、何かの鍵になる可能性だってある。

 キコリは着ていた鎧を引っ込めると、サイズの合うモノを探してみる……が、意外にすぐに見つかる。

 ドラゴンメイルとは違い不思議な光沢の金属で出来た悪魔の鎧だが、兜も含め、見た目は意外に普通だ。


「……いつもの鎧の方が悪魔っぽいわね」

「それは俺も思う」


 言いながらキコリは、じっと鎧を見ていたドドへと振り向く。


「ドドはどうする? 盾もあるぞ」

「うむ……」


 だが、ドドは難しそうな表情で置いてある武具を弄り回し、やがて難しそうな表情でキコリたちを見る。


「すまない。此処に加工場があるなら、それでドドの武具を作りたい」

「え?」

「無理を言っているのは分かっている。だが此処にドドに合う鎧もないし、今の鎧ではドドは足手纏いだろう」


 ドドの言っていることは分かる。今後どう動くにせよ、ドドの装備が整うのは悪いことではない。

 そして少なくとも、此処には武器や防具を作れる何かがある可能性が高い。

 しかし、それは日数次第ではある。


「どの程度かかる? ドド」

「設備次第だが……3日あればいい」

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