悪魔の感性

 翌日。オルフェが起きると、キコリの姿はなくドアが開いていた。

 寝ているドドの上を飛んで通り過ぎながら外に出ると、そこではキコリが斧の素振りをしていた。

 

「……何やってんの?」

「いや。もっと頑張らなきゃって思ってさ」

「アンタ、どうせ我流なんだから素振りとか意味ないでしょ。そういうのは技術会得してる奴がやるもんじゃないの?」

「そんなことないだろ。ほら、体力とか筋力とかさ」

「体力なら今まさに減らしてんでしょバカ。そういうのは他にやることがない時にしなさい」


 オルフェに言われキコリは「だな」と苦笑する。正論以外の何物でもないから、従う他ない。


「で、なんで突然そんなのやり始めたのよ」

「んー……なんか頑張らなきゃって思ってさ」

「はあ?」


 オルフェは疑問符を浮かべるが……すぐに何かに気付いたように顔を赤くしていく。


「ア、アンタまさか! あの時起きて……!」

「何の話だ?」

「正直に言え! 起きてたのね!?」

「ちょっと何の話か分からないな」


 そうやってキコリとオルフェが騒いでいるとドドも起きてきて、キコリの耳を引っ張っているオルフェを見て首を傾げる。


「おはよう。どういう遊びだ? ドドには分からない」

「遊んでんじゃないのよ!」

「おはよう、ドド。早速今日の方針をイテテ」


 耳をグイグイ引っ張るオルフェに抵抗しないままに、キコリは話を進めていく。

 この悪魔の作った都市をある程度調べて、可能であれば地図か何かを手に入れたい。

 そう提案すると、ドドも頷く。


「ドドも賛成する。干からびるのが先か抜け出すのが先かという事態は避けたい。それに……」


 言いながら、ドドは家の中に立てかけてある盾に視線を向ける。


「ドドの盾は限界だ。此処に都市機能があるのなら、鍜治場があるのかも確かめたい」

「鍜治場か……あるかな?」

「あるでしょ。あんな人形作るくらいなんだから」


 昨日オルフェが壊した人形にキコリとドドが視線を向けるが、これ以上ない説得力だった。


「よし、じゃあ軽く朝食をとったら行こう」


 朝食といってもこの状況ではナッツや干し肉、干し芋程度しかないが……軽く齧って水を飲んでから、3人はひとまず中央へと向かい始める。そこに一番大きい建物があるから、といった程度の理由だが、人形のメンテナンスの為の施設があるとすれば大きな建物だろうという狙いもあった。

 全て「かもしれない」や「だろう」だらけだが、まさか悪魔の感性を理解できるはずも無し。

 自分ならそうだろうという予想で動くしかない。そして……辿り着いた巨大な中央の建物は、相応の大きな扉が真正面についていた。

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