こんなもん作るのは

「んー……」


 照明魔法を動かしながら、オルフェはあちこちを照らしていく。

 何処かにヒントがあるはずだ。それもかなり分かりやすい形で……だ。

 通常の都市であればともかく、非常用の避難場所の機能は、比較的簡単に動かせるようになっているはずだ。ならば、それは何処か?

 探していくうちに……オルフェは、そびえたつ柱に埋め込まれた魔石を発見する。


「あー、アレね」

「あんなところに……魔石か?」

「相当大きい。ドドはあんなサイズは初めて見た」


 たぶんだが、魔石はアレ1つではないだろうとオルフェは思う。

 同じような柱が幾つかあって、それぞれに供給できるようになっているはずだ。

 そしてそれはまさに緊急時の為であって、本来はもっと別の正式な手順があるのだろうが……そんなものは今はどうでもいい。


「ちょっと此処で待ってなさい」


 オルフェは魔石のある場所まで飛んでいくと、軽く触れて魔力を流し込んでいく。


「流石にこのサイズを満たすのは少し疲れるけど……ま、仕方ないわね」


 オルフェが魔力を流し込めば、魔石に輝きが灯っていき……それはやがて魔石全体を輝かせる。

 そのまま魔石から何処かに光が飛んでいき、別の柱の魔石を輝かせ、そこからさらに別の柱へ……合計5つの柱が輝くと、天井からうっすらと光が降りてきて地面を照らし始める。


「……機能が無駄過ぎるわね。なんで全体で魔力を分けてんのよ。余程の魔力バカでないと完全運用できないでしょコレ」


 事実、満たされていたはずの魔石の輝きは5分の1になってしまっている。

 これでどの程度もつのかは分からないが……まあ、一晩くらいはもつだろうとオルフェは考えながら下へ降りていく。


「凄いなオルフェ!」

「ドドは賞賛を送ろう」

「ま、こんなもんよ」


 キコリとドドに褒められてオルフェはちょっと良い気分になって胸を逸らすが……そこで、何かに気付き考え込むキコリに気付く。


「どうしたのよ」

「いや、たいしたことじゃないんだけどな。此処を作ったのはどんな連中かと思って」


 少なくとも空を飛べて、魔石を満たせるほどの魔力がある。

 それがこの場所を緊急起動する為の条件だとすると……妖精のような魔法のプロかドラゴンのような絶対者といった者しかキコリには浮かばない。

 だが、此処にある建物は妖精サイズでもドラゴンサイズでもなく、人間サイズ。

 ならば、此処に……あるいはこの「上」に居たであろう者たちは何者だったのか?

 その問いに、オルフェはなんでもないことであるかのように答える。


「そんなの決まってんじゃない。こんなもん作るのは悪魔以外いないでしょ」

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