ひとまず踏み込んでみるのも手かなって
ひとまずそれについては仕方がないと諦めて、キコリたちは都市の中へと入る。
手近な建物に入ろうとするも、金属製のドアは鍵でもかかっているのか開かない。
といっても鍵穴もないし、まさか内側からかんぬきをかけているわけでもないだろう。
「……開かないな」
「壊さないでよ? 何があるか分かんないんだから」
「そこまで考え無しじゃないぞ?」
「ならいいんだけど」
とはいえ、考えて壊すことはあるかもしれない……とキコリは考えて、オルフェの疑わしげな視線からスッと顔を逸らす。
「何か妙なこと考えてなかった?」
「考えてない」
「考えた結果壊すかも、とか考えてなかった?」
「……考えてた」
やっぱりじゃないのバカ、とキコリを叩くオルフェを見ながらドドは笑う。
「ハハハ、仲がいいな」
「こういうのは世話が焼けるっていうのよ。つーかアンタも考えてる?」
「ドドは頭が悪い。向いてない」
「こいつら……」
オルフェは頭を抱えそうになるが、深呼吸して考えを巡らせる。
ともかく、この辺りの扉はどうにも開きそうにはない。
それ自体は別に優先度は高くはない。家探しが目的ではないし、この都市のあれやこれやにも全く興味が無いし意味がない。
ない、のだが。
(ドドの疲労の色が濃い……どのみち、ここでいったん休憩はしたいわね)
安全度を考えれば、この辺りで野営をするべきだ。そういう意味では扉が開けばいいのだが。
何しろ大地の記憶とやらの影響がある以上、此処に何が突然わいて出るか分からないのだ。
まあ、それを言うなら「家の中」にも出る可能性はあるのだが、そこを考えるとドツボにはまってしまう。
「うーん……」
「オルフェ」
「なによ」
「とりあえずこの都市、動かしてみないか?」
「なんでよ」
「このままじゃラチ開かないし、ひとまず踏み込んでみるのも手かなって」
確かにそれはその通りだ、とオルフェは思う。
踏み込むことしかしないキコリに言われた点については多少引っかかるが、間違ってはいない。
どうせ何か起こるなら、都市機能を動かしたところで大した差はない。
「よし、やってみましょうか! どうすればいいかは分かんないけど!」
「魔力が流れればいいんだろ? その辺に流したら動いたりしないか?」
「ちょっとでも試したら本気で怒るからね」
「お、おう」
こういう類のものは、基本的に「動かすもの」と「動力になるもの」で分かれている。
そしてその場合の動力は基本的には魔石だ。
なら、それを探せばいい。ドアの奥にあったりしたら力尽くになるが……その可能性は低いと、オルフェはそう考えていた。
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