地下都市

「ふーん……じゃあ、これを各自が持っていけばいいのか?」

「予想だけどね」


 キコリとオルフェは小さな欠片を拾い上げるが、ドドは欠片を拾い上げ、じっと考えるような様子を見せる。


「どうしたんだ?」

「此処に鍜治場があれば、これで色々作ってみたのだが。それが残念だ」

「……そっか、なんか鍛冶師って感じだな」


 キコリがそう言えば、ドドは首をかしげてみせる。


「ああ、ドドは鍛冶師だ。どうしたキコリ、もう忘れたのか」

「あー、いや。ドドの鍛冶師らしいところが出たなって意味だったんだが」

「そうなのか。ドドにはよく分からん」

「何アホな会話してんのよ。さっさと行くわよ」


 オルフェにそう睨まれると、キコリとドドは慌てたように「ああ」と同時に声をあげて、思わず顔を見合わせて笑ってしまう。

 それを見てオルフェは「なんなの、こいつら……」と呆れていたが、ともかく3人は再び地下通路を進んでいく。

 そして……曲がり角から姿を現したメタルゴーレムに、僅かに緊張を見せる。

 予想通りにこの欠片が通じれば良し、通じなければ……逃げるしかない。

 ズシン、ズシンと音を立てて歩いてくるメタルゴーレムは……キコリたちの前で足を止めると、息を吞むキコリたちを避けるように、そのまま何処かへと歩き去ってしまう。

 その姿が消えてから……全員で深く息を吐きだす。通用した。その安堵が、緊張を解いたのだ。


「正解だったみたいだな」

「そうね。これでアレと戦わなくて済むわ」


 おかげで逃げ回らなくて済むが……もう1つの問題である「順路」については解決していない。

 流石にメタルゴーレムが案内してくれると期待したわけではないが、これでは彷徨っている問題が解決していない。


「ルートの問題は未解決のまま、か。まだしばらく彷徨うしかないな」

「それにしたって限度があるわよ」

「此処はあまり長居したくないとドドは思う」

「……まあ、な」


 今はオルフェの照明魔法で明るいが、だからといってこの状況は続けば続くほど精神を削っていく。正直、あまり長く居たくはないのだが……それでも道が見つからない以上は仕方ない。

 キコリたちは通路を進み、そして……広い空間に出たことに気付く。


「これって……」

「町、か?」


 通路とは全く違う広い空間。オルフェの照明魔法に照らされるのは、間違いなく建物だ。

 かなり奥行きもありそうだが、暗くて遠くまでは見通せない。

 だが、これは……探していた目標の1つである地下の避難所、あるいは地下都市であることは間違いないだろう。


「暗いのは変わらないんだな」

「これは……アレね。魔力切れで稼働してないって可能性もあるわね」

「なら、魔力を籠めれば稼働するのか」

「たぶんね。何処にどうすればいいかはサッパリ分からないけど」

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