魔法金属

 ちなみに、オルフェはキコリとは別の意味でドドに思うところはない。

 というよりは、ほぼ興味がないのだ。それは妖精としてはひどく普通のことで、オルフェもその例から大きく外れてはいない。

 ただ、キコリが普通に相手をしている、というフィルターを通してドドを見ているので、普通にオークを相手にするよりは大分愛想が良いことを付け加えなければならないが。

 だからオルフェは「おつかれ」とドドに一声だけかけると、すぐにメタルゴーレムの残骸に触り何かを調べ始める。


「コレで何が分かるんだ?」

「さあ? 何か分かるようなものがあるか調べるのよ」


 オルフェは手を止めずに残骸に魔力を通したり眺めたりとしていき……やがて「んー」と唸り始める。


「妙なところは一切ないわね。あくまであたしの分かる範囲でだけど、この残骸に何かしらの魔法がかかっている様子はないわ」

「でも、そうだとすると……アイツ等はどうやって判定を行ってるんだ?」


 キコリに聞かれ、オルフェは考え込む。此処が誰かが来ることを前提にしているなら、その誰かを認識できなければどうしようもない。まさかメタルゴーレムに顔を覚えさせているわけでもないだろうし、そうなると……。


「この素材自体、かしらね?」

「素材って……この金属か?」


 キコリが残骸の一部を持ち上げると、オルフェは頷く。


「このよく分かんない金属自体が目印なんじゃないかと思うのよ。かなり特殊っぽいし」

「確かに、不可思議な金属だとドドも思う」


 ドドも小さめの欠片を持ち上げると、じっとそれを見つめる。


「鉄より固く、魔法をある程度弾く金属。恐らく、この近辺でだけ採れるものなのだろうとドドは考える」

「でも、マジックアイテムってわけでもないんだろ? 素材そのものを見分けられるものなのか?」

「一部の魔法金属であれば可能だ。ドドもミスリルやブラッドメタルと呼ばれるものを見たことがある」


 魔法金属の代名詞であり魔力に対する親和性の高いミスリル。魔法銀とも呼ばれるソレは、自ら魔力を持っていることでも有名だ。

 そしてブラッドメタルは赤血鋼とも呼ばれるものであり、こちらは魔法銀と対になると言われる……汚染地域で時折見つかる金属だ。

 こうしたものは特有の魔力パターンを持っており、他と間違うことはないとされている。

 人間の貴族の子供がミスリルのアクセサリーなどを持っているのは、いざという時に追跡する為だと言われるほどだ。

 勿論そんな人間社会の知識はドドは知らない、が。


「ミスリルもブラッドメタルも特有の気配を放っている。アレが魔力であるならば、コレもまた似たようなものがある」

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