おかしな男

 そうして、見つけたメタルゴーレムをキコリが引き寄せドドが耐える作戦に出た。

 2体以上出ればドドが耐えきれないから、キコリが上手く1体引き寄せなければいけないのだが。


「う、うおおおお!」


 当然、それでもかなり命懸けだ。メタルゴーレムはその図体の割に、かなり素早い。

 油断して殴られでもすれば、今のキコリでも普通に大きなダメージを負う程度のパワーを持っている。

 それでいて、自分の射程距離から遠く離れると深追いしないのだ。

 だからこそメタルゴーレムを引き離し過ぎない程度で走り、攻撃を回避しながらキコリはドドの元へと連れてくる。


「頼んだ、ドド!」

「任せろ」


 スライディングするようにドドの背後へと滑っていくキコリをそのまま見送り、ドドはかなり歪んだ大盾を構える。

 ドドからしてみれば、この総鉄製の分厚い大盾をこれだけボロボロにするメタルゴーレムの力は凄まじいの一言に過ぎる。

 あと何回か使えば使い物にならなくなるのは間違いないが……それでも、やらなければならない。

 そしてメタルゴーレムがドドを蹴り飛ばすべく足を繰り出して。


「ぐぬううううううううう!」


 耐える。盾が更に歪む。ザリザリと衝撃で押される身体を、踏ん張ってなんとか堪える。

 骨まで響くような打撃を……それでも、ドドは耐えた。

 オークという筋肉と頑丈な骨に恵まれた種族の意地も含み、それでもメタルゴーレムは強いとハッキリ感じる。

 真正面から殴り合えば数回もドドは耐えることが出来ないだろう。

 だから、ドドはこの歪んだ盾を構える。痺れる腕に耐えよと、動かぬ溶接された鉄になれと言い聞かせ、ただ耐える。

 

「フェアリーケイン」


 そうして、先程よりは大分早くオルフェのフェアリーケインが完成しメタルゴーレムに大きな穴を開けていく。

 崩れ落ちたメタルゴーレムを前に、ドドは大きく息を吐く。なんとか、耐えたと。


「おつかれ、ドド」

「ああ。だが……もうこの盾はメタルゴーレムの攻撃に耐えない」

「耐えられるだけでも凄いけどな。盾も含めてドドの実力だろ?」

「……そうか」


 正直、おかしな男だとドドはキコリのことを思っている。

 ドラゴンであるらしいと聞いて、正直納得したほどだ。

 見た目は人間そのもののくせに、その精神が人間らしくない。

 普通人間であればオークの見た目を嫌うものだ。以前ドドが人間の言葉を覚える原因となった、助けた人間ですらオークに対する嫌悪感を最後まで消し切れていなかった。

 だが、キコリにはそうしたものが一切ない。今もドドの姿に対し、何も思うところがないかのようだ。

 それは……ドドの知る「人間」からは、大きく乖離したものだったのだ。

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