フェアリーケイン
「分かった」
キコリは疑うこともなく、オルフェへとそう頷く。
いや、疑う必要など何処にもない。
相棒が任せろと言ったのだ。それを疑う意味など、何処にあるだろうか?
だから、キコリは疑わない。オルフェがやろうとする何かをフォローできるように、オルフェのすぐ側で斧を構えて待つ。
その視線の先では、ドドがメタルゴーレムの攻撃を受け続けている。
「ぐっ、お……っ……ドドは、そう長くは、もたないぞ……!」
「もうちょい耐えなさい!」
アッサリ言い放つオルフェの手元では、超高速で魔力が集まり球状に纏まっていく。
キイン、と空気すらも響かせる音はやがてギイン、という鈍く激しい音になっていき……キコリはそれが、信じられないくらいに濃縮された魔力の塊であることに気付く。
キコリでは制御できないほどに強いそれは、以前オルフェが使ったグングニルなど比べ物にならないほどの「何か」に変化していく。
分かる。キコリでは分からないほどの法則が、その中に詰め込まれていくのが。
妖精の魔法力の高さの一因である、魔法の自動制御能力【フェアリースタッフ】。
同じく妖精の魔法力の高さの一因である、魔法の解析能力【フェアリーアイ】。
そして高い魔力を支える魔力への親和性と保有魔力を補助する【フェアリーローブ】。
妖精としての3つの代表的能力と、オルフェ自身の魔法の巧さ。
その全てを高いレベルで使いこなし、それでようやく完成するか分からない程に緻密な構成。
それをオルフェは、今この瞬間に編み出し構築していた。
イメージと構築。構築とイメージ。極めて高度な、大魔法を超える超魔法。
その域に届くものを、オルフェは組み上げる。
「……完成。フェアリーケイン」
ポウ、と。小さな光球が放たれる。魔法に疎いものであれば、誰もが「なんだそれは」と笑うような、そんな代物。
しかし、それは。多少でも魔法に関する能力があればゾッとするようなものだった。
ドドは気付かない。
メタルゴーレムは気付かない。
だから、ドドがついに耐えきれずに弾き飛ばされた時。メタルゴーレムは自らの頭上に浮かんだそれを、認識しながら無視した。
だから、その時点でメタルゴーレムの命運は尽きた。
キュバッと。光球……フェアリーケインから光線が放たれる。
それはフェアリーケインの下を通り過ぎようとしたメタルゴーレムを貫いて。
続けて連続で放たれた光線がメタルゴーレムを穴あきチーズのように変えていく。
ミョルニルやロックランスを弾いた「魔法を弾く」はずの身体は、僅かな抵抗らしきものを見せながらも貫かれていく。
やがて、メタルゴーレムが残骸となり音を立てて崩れ落ちていくのを……キコリとドドは、呆然とした表情で見つめていた。
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