メタルゴーレム
その話は、キコリも聞いた覚えがある。確かシャルシャーンが異常な力を持った人間を滅ぼしたという話だったはずだ。
「それが……此処だっていうのか?」
「正確にはこの上だね。此処は大分地下のようだ。それで残ったのかな?」
なるほど、あのシャルシャーンの攻撃を叩き込まれたのであれば地面だって抉るだろう。
此処がその現場であって「歪みの始まった場所」であるというのなら……。
「そうか。またダンジョンの配置が変わったのか」
「ご名答。そして本来ならボクが奴のところまで案内するはずだったんだけどね」
シャルシャーンの言葉に全員が驚きと共にシャルシャーンを凝視する。
その言い様では、まるで案内出来ないかのように聞こえるからだ。
「いや、すまない。此処さえ抜ければまた出会えるはずだ」
そう言っているうちにも、シャルシャーンの姿がノイズのように乱れ始める。
今にもそのまま崩れて消えそうな、そんな様相すら呈している。
だが、どうすればいいか誰にも分からないのだ。
「この場所は、冷静なボクが存在し辛い場所でね。上の状況も、少しばかり特異点じみている。命が惜しければ外には出ないことだね」
「ま、待てよシャル! そんなこと言われても!」
「大丈夫だ。ボクの『記録』が確かなら、コレは地下都市のようなものだ。少しばかり面倒なのもいるが……どうにかなるさ」
その言葉を最後にノイズが一気に増え、シャルシャーンの姿が消える。
同時に聞こえてくるのは地下を揺らすズン……という衝撃。
継続的に響いてくるその衝撃と音は、恐らくシャルシャーンの言っていた「特異点じみた」状況のせいであるのだろうとキコリは思う。
(上で一体何が起こってるんだ……!?)
だが、それを確かめるのはあまりにもリスクが高すぎる。
だからこそ、キコリはオルフェとドドへと振り向く。
「……先に進もう。此処を抜けるんだ」
「そうね。あのドラゴンが居ないのが普通なんだから」
「ドドも最善を尽くそう」
頷く2人にキコリも頷き返し、自然とキコリを先頭に、オルフェを挟んでドド、という隊列で進んでいく。
地下全体が揺れるこの状況では、何か些細な音の異常があっても気付けるかどうかすら不明だ。
だが、それでもキコリたちは全神経を張り詰めさせながら慎重に歩いて。
そんな中でも分かる、明らかな足音。重たげなその足音を響かせながら通路の先から現れたのは……キコリたちよりも大きな、角ばった金属製の巨体。
「アイアンゴーレム……! 違う、メタルゴーレムだわ! キコリ、警戒なさい! こいつ、場合によってはかなり面倒よ!」
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