君もまたドラゴンなのだ
ネクロマンシー。死霊魔法。あるいは禁断魔法・死を穢し世界を腐らせるもの。
呼び方は色々あるが、要は死者を操るものであるという点では一致している。
そして……これら禁断魔法とされる理由は、使うことでその場に深刻な魔力異常を引き起こすからだとされている。
その具体例がこの場の紫色の草や曲がりくねった木であり、ドドの村でもすでに魔力異常は引き起こされていた。
魔法の得意な妖精であるオルフェは当然それに気付いたし、魔力を自然に周囲からチャージする能力を持つキコリは異常な魔力を取り込むことで敵意にも似た強い不快感を抱くに至った……つまりは原因であるネクロマンサーを敵だと、ほぼ本能でそう判断したのだ。
「魔法の素人ってわけでもあるまいし、そんなもん使う時点で他全部にケンカ売ってんのよ。しかも戦力の増強? 何しようっての?」
「ハ、ハハ……なるほど。そうか、タイミングが悪かったか。君たちのようなモノがやってきてしまうとは」
ネクロマンサーは自嘲するように笑うが、その表情までは分からない。
そして何より……質問に答えてもいない。だからキコリは一切の油断なく、周囲に視線を巡らせて。先程から感じていた違和感を、口にする。
「……お前が集めたアンデッド、何処に行ったんだ? 見てもいるように思えない」
そう、この場所には集められたはずのアンデッドがいない。
少なくともドドの村のオークたちのアンデッドの姿はなくてはならないはずだが、それもない。
隠しているのだろうか? しかし、何故? 出さない理由はないはずだ。
キコリはそれが、どうにも奇妙で仕方がない。
「シャルシャーンにせよ君たちにせよ、事を為そうとすると必ず『何か』がやってくる。ああ、なんたることか。望んだとおり、人間には手を出していないじゃないか。何が不満だというのだ?」
「シャルシャーン……? 一体何を」
「考えてみれば。君もシャルシャーンと似た匂いがするな。あの傲慢で尊大で……しかし間違いなく超越した者どもと似た匂いと気配」
ネクロマンサーはキコリの質問には答えず、ぶつぶつと何かを呟き始めていた。
仮面の奥の眼が怪しげな光を放ち始め、明らかに人間ではないオーラが漂ってくる。
そして、ネクロマンサーは。ギロリとキコリを見つめる。
それは怒りというよりは納得と羨望、そして……ギラついた、欲望の色。
「ああ、そうか。分かったぞ。君もまたドラゴンなのだ。それで全てが納得がいく」
推測でもカマかけでもなく、明らかに確信した色が、その声にはあった。
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