欲するならば
(ドラゴン……そうか、感じてた魔力は全部こいつのモノ……ってことは、この領域は全部このドラゴンの支配下ってことね)
ドラゴンならそれくらい出来てもおかしくない。いや、何が出来てもおかしくないのがドラゴンという生き物だとオルフェは思っている。そう言う意味では得意不得意のハッキリしているキコリが特殊と言えるが……。
それにしても、このドラゴン……世界樹は他のドラゴンほどの恐怖を感じない。
それがオルフェには不思議でたまらなかった。
「初めまして、ユグトレイル。俺はキコリ。そしてこっちはオルフェだ」
『ああ。どうやらドラゴンに「なって」からは短いようだ。で、そのキコリとオルフェは何故此処に?』
「俺達はヴォルカニオンから世界樹が此処に在ると聞いて来たんだ。貴方がその世界樹ということなんだよな?」
『ヴォルカニオン。その名は久々に聞いた……アレは珍しく理知的なドラゴンだった』
「珍しくって……」
『ドラゴンは会話は出来ても話の通じない者が多い。会話を利害の調整道具にしか考えていない証拠だな』
他のドラゴンを知らないからキコリは何とも言えないのだが……オルフェはクラゲのドラゴンを思い出し「あー」と呟いている。
『そこの妖精は何か知っているようだな』
「遠目でクラゲみたいなドラゴンを見た事なら……」
『海嘯のアイアースか。話しかけなかったのなら正解だ。奴は特に話が通じない』
「会ったことが?」
キコリがそう問えば、ユグトレイルからは『ああ』と返ってくる。
『此処がこうなる前、行き来はもう少しばかり自由であった。今となっては、私も此処を動く気はないが』
「……人間が原因だって聞いた」
『然り。グレイ・ルエッタを名乗る人間であった。異常な程の力を持ち、暴れ回り……世界の理を一部だが崩した。故に「不在のシャルシャーン」が竜神の要請を受け磨り潰した」
「不在の……?」
『形状としてはヴォルカニオンに少し似ているな。少々厭世的ではあるし……探したところで会えるとは限らぬのが奴の「不在」たる所以だが』
よく分からないが強力なドラゴンであることは確かなのだろう。
『さて、話を戻そうキコリ。此処には何をしに来た?』
「恩人の身体を治すのに世界樹が効くと聞いた。魔法を少し使うと倒れてしまうような、そんな状態なんだ」
『人間の身体についてなどは知らんが……私の葉を砕き飲ませれば良いだろう。充分以上の治癒効果があるはずだ』
「それなら……!」
『欲するならば相応しい力を見せよ、キコリ。私の「世界」に挑み、私が自らの一部を与えてもよい存在か示すがいい』
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