世界樹と呼ばれしもの

 その後も何度かレッドキャップとの戦いを繰り返すが、自然とメイジはオルフェ、それ以外はキコリという図式になりつつあった。

 理由は色々あるが、レッドキャップメイジ程度の魔法であればオルフェに通用しないというのが大きかった。


「魔法が通じないってのも凄いよな」

「妖精相手に魔法で戦おうってのは馬鹿の証拠よ」


 魔法は結局は魔力によるモノだ。武器での攻撃が良い防具に防がれるように、魔法での攻撃は同じく魔力で防御を巡らせている相手には通じにくい。

 いわゆる妖精の持つ能力の1つ【フェアリーヘルム】だが……要は魔法に対する鎧だ。


「そういえばレッドキャップとかトレントは」

「持ってるわけないでしょー? アイツ等が百歩譲って妖精の仲間だったとして『亜種妖精』でしょうが」

「あー、そういう……」


 まあ、人間も普人にエルフ、獣人と色々いる。そういうものなのだろうとキコリは納得して。

 歩き続けた先に、突然視界が開ける。

 その理由は……説明せずとも、目の前にあった。


「な、なんだ。これ……?」

「……世界樹」


 天を突くような巨大な……あまりにも巨大すぎる幹と、天を覆い尽くすかのような枝葉。

 そして、周囲に自分以外を許さんとばかりに突き出た根の一部。

 それ1つが雄大な世界を現すかのような、そんな凄まじい存在感を持つ巨木であった。


「これが世界樹……」


 呟いた瞬間、世界樹から凄まじい魔力の波動のようなものがキコリたちにぶつけられる。

 ブオン、と。魔力そのものが可視化されたかのような濃密すぎる波動はキコリとオルフェを吹き飛ばし、オルフェですら防御しきれずに吹き飛ばされ地面に落ちる。


「な、なんだ……!?」

『人の形を持つドラゴン、か。しかもドラゴンには妖精の力をも感じる……なんとも節操のない有様か』

「頭の中に声が……!? 嘘でしょ、意志を持ってるの!?」

『ふむ。純粋な妖精を見るのは何時ぶりか。かの妖精女王が私と切り離されてよりしばらくたつ』

「ちょ、ちょっと待ってくれ。こっちは状況が整理できてないんだ。まず貴方は世界樹……でいいんだよな?」

『然り。私は世界樹と呼ばれしもの。しかしながら、私の真の名は「守護のユグトレイル」。すなわち、ドラゴンである』

 

 ドラゴン。守護のユグトレイル。

 この巨大な木が世界樹であり、ドラゴンでもある。

 その事実にキコリは頭の中が混乱しそうだった。キコリにとってドラゴンとは「爆炎のヴォルカニオン」であり、自分の姿が特殊なのだと思っていたからだ。

 しかし……オルフェはこのエリアに来てから感じていた疑問が、一斉に解けたような……そんな、気分だった。

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