どうやって連携してんのかしら

「オルフェ!」

「平気!」


 炎を弾くようにして飛び出したオルフェは、火球の飛んできた方向に驚きで目を見開いている「杖持ち」のレッドキャップを見つける。

 いわゆるレッドキャップメイジだが……どうやら木の陰に隠れて機会を伺っていたようだ。


「ウインドブレイド!」

「ギヒッ」


 反撃のように放ったオルフェの風の刃をレッドキャップメイジは木の陰に隠れることで回避しようとして……しかし、木ごと真っ二つに斬り裂かれ倒れる。

 木に隠れていれば当たらないと嘲笑するような笑みを浮かべたまま絶命したレッドキャップメイジをそのままに、オルフェはキコリへと振り向いて。


「あー……そっちも平気そうね」

「ああ」


 そこにはすでにレッドキャップを割ったキコリの姿がある。

 怪我を負っている辺り、かなり無茶して倒したのが透けて見えるが……そんなキコリに近づいて矢を抜くと、ヒールをかける。


「なーに無茶してんのよ」

「オルフェがヤバいと思ったからさ……まあ、結果的には違ったけども」

「そういうとこは嫌いじゃないけど。無茶のしどころを間違えんじゃないわよ」

「無茶のしどころ……か」

「何よ」

「いや、なんでもない」


 多少の無茶程度なら、キコリは何の躊躇いもない。

 余裕で相手をどうにか出来る程自分が強くないと知っているからだ。

 引くよりも踏み込むことが敵をブチ殺すには大切だと知っているからだ。

 だから。

 何かを唱えるような僅かな声に反応して、そこに居たレッドキャップメイジを見つけて。

 躊躇いなく、地面を蹴って前へ跳ぶように走る。

 放たれた石の矢は、避けられない。だから、全身で受けて……一発が兜に命中し、キコリの頭から吹き飛ばす。

 だが、それだけだ。鎧を貫けてはいないし、頭も無事だ。

 だから、逃がさない。距離をとろうと身を翻すレッドキャップメイジへと追いついて、斧を思いきり振り下ろす。

 響く鈍い音はレッドキャップメイジを絶命させて。そこでようやく、キコリは気を落ち着けるように息を吐く。

 

「ふう……結構居たな」

「数より連携が問題よ。レッドキャップとトレントが協力してるなんて」

「その辺、よく分かんないんだよな。そんなに問題なのか?」

「言葉通じないでしょうが。どうやって連携してんのかしら」

「あー……なるほどな」


 確かに言葉が通じなければ連携できるはずもない。

 余程訓練していれば話は別だろうが……。


「そういう訓練してるんじゃないか?」

「どっちが? どっちに? 言っとくけどトレントって同族以外絶対認めないわよ」


 あたしも襲われたことあるんだから、と忌々しそうに言うオルフェにキコリは思わず「そ、そっか」と頷いてしまう。


「まあ、連携してることは分かったんだし。その辺の謎は置いといてもいいだろ」

「そうね。さっさと中央行けば、色々どうにかなるでしょうしね」

「ハハッ、だといいな」


 此処では木々の揺れる音さえトレントかと気にしなければならない。

 だが、キコリもオルフェも一切恐れることはない。

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