嫌な予感バリバリじゃないの

 翌朝。

 転移門にキコリが触れれば、やはりバヂッと音を立てて弾かれる。

 時間がたてばどうにかなる……ということではないようだ。

 ならば次は他の転移門へと向かい状況を確認するという第2案になる。


「とりあえずここをスタートとして、右側の転移門に行ってみるか」

「ま、無難ね」


 中央に向かう手もあるが、何かが起こる確率も高い。

 そう考えれば、このルートで正しいはずだ。

 はず、なのだが……何か「違う」という感覚がキコリの中に湧き上がっていた。

 それは、歩き始めたキコリの足を止めて。何かに突き動かされるようにキコリは、森の中央へと視線を向ける。


「ちょっと、どうしたのよ」

「今からすげえバカみたいなこと言おうと思うんだけどさ」


 そう前置きすると、キコリは森の中央へと指を向ける。


「俺達が向かうべきなのは、あっちだっていう気がする」

「ふーん。じゃあ、そっち行きましょ」

「あれ、反対しないのか?」

「しないわよ。何が正解か分かんないんだから、勘頼りが一番後腐れないわ」

「……そういうもんか?」

「そういうもんよ」


 それに、とオルフェは思う。


(この状況……他の転移門も『同じ』って気がするのよね。何かがあたし達を此処に閉じ込めてる……うげ、嫌な予感バリバリじゃないの)


 もっとも、それを口に出せば現実化してしまいそうでオルフェは言わない。

 手遅れな気もするが……だからこそ、縁起くらいは担いでおきたいのだ。

 だからこそ、歩きだすキコリにオルフェは黙ってついていく。

 この先に何があるのかは分からないが、きっとトンでもない何かであることは間違いないのだから。

 そうして歩いて行けば、赤い頭部を持つレッドキャップたちの姿がある。


「ギイ……」

「ギギイ……」


 行く手を塞ぐのはナイフを構えたレッドキャップたち。

 明らかに注意を引く囮だが、無視するわけにもいかない。

 キコリは斧を構え……瞬間、キコリの両隣の木が同時にその太い枝を振り下ろす。


「ぐっ……!?」


 ガヅン、ガヅンと連続で響く音。トレントだ。トレントが攻撃を仕掛けてきたのだ。

 瞬間、キコリの鎧の隙間に黒塗りの矢が突き刺さる。それを放ったのは、トレントの枝の上に隠れていたレッドキャップ。

 

「このっ……アイスアロー!」


 オルフェの放った数本の氷の矢をトレントが枝を伸ばして防ぎ、しかしキコリががら空きの幹に斧を叩きつける。


「ギヒイイイイ!」

「死ね! アイスアロー!」


 落下途中、今度こそ氷の矢に貫かれ絶命したレッドキャップだが……その間に囮役のレッドキャップもキコリへと襲い掛かっている。

 そして、もう1体のトレントはオルフェを叩き落とすべく枝を振り回す。


「わっ、ちょ……もう、邪魔すんじゃないわよ! ボルトストライク!」


 オルフェの放つ電撃がトレントを穿ち炭化させて。何処かから放たれた火球が、オルフェを包み込んだ。

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