ちょっと意味分かんない

「シャアアアアアアア……」

「アリ!?」

「うげっ、ソルジャーアント!」


 明らかにこちらを威嚇しているアリ……ソルジャーアントを、キコリは注意深く見つめる。

 斧を握る手の力を僅かに強め、いつでも襲い掛かれるように体勢を僅かに低くする。

 その瞬間。ソルジャーアントの発射した「何か」がキコリの頭上を通り過ぎていく。

 それが何かを確かめる前にキコリは走って、その頭に斧を振り下ろす。

 ガギン、と響いた音は斧が弾き返される音。

 だがキコリは臆さずにそのまま斧を乱打する。

 ガンガンガン、と。激しいノックオンのような、しかし凶悪な打撃音はソルジャーアントに再度の発射を許さず、しかしハサミにも似た顎がキコリを断とうと襲い来る。

 だが、ジャギンと音がした時にはもうキコリはソルジャーアントの真横に回り込んでいる。


「硬いな」


 まるで金属の鎧を叩いているようだ、とキコリは思う。

 だがキコリを斬る為に僅かに伸びた首の隙間、硬い外骨格に守られていない場所。

 そこにキコリは斧を振り下ろす。

 ザグン、と。突き刺さった斧はソルジャーアントを一撃で絶命させて……しかし、現れたもう1体のソルジャーアントがキコリの首を狙い顎をジャキンと閉じる。

 抜けない斧を見捨てて回避したキコリは、その顎に手を触れさせる。


「ブレイク」


 ズガン、と。ソルジャーアントの顎が吹っ飛び、悲鳴をあげるソルジャーアントの顔面にキコリは再度触れて「ブレイク」と唱える。

 そうすると、今度こそソルジャーアントの頭部が吹き飛んで。

 倒れたソルジャーアント2体の死骸をそのままに、キコリは僅かに溜息をつく。


「……俺自身も強くなってはいるんだよな。でもまあ、チャージ無しじゃあこの程度か」

「充分だと思うけど……あの魔法、あたしもちょっと真似できないわよ?」

「そうなのか?」

「うん。なんでも破壊するとか、ちょっと意味分かんない」

「一応『元の魔法』はあるんだが」

「あのソードブレイカーとかってやつ? 全然違うわよバカ」


 まあ、オルフェが言うからにはそうなのだろうが……アリアも何も言っていなかったし、禁呪指定された時にも何か特別な話はなかったはずだ。


「効果が分かりやすいから逆に気付かないんでしょうね。使おうとしたら使えないはずよ。いくら魔法がイメージったって、限度があるもの」


 使えるのはドラゴンくらいでしょうね、とオルフェは呆れたように言う。

 だとしても、キコリは人間だった頃からブレイクを使えていた。

 ならそれは……キコリに最初からドラゴンになる可能性を示唆するものだったのだろうか?


「まあ、良い魔法だぞ。あんまり人前じゃ使えないけどな」

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