ドラゴンがその気になれば
「この先に……世界樹が……?」
「いずれ、って言ってるでしょ」
キコリの後ろに隠れたオルフェがボソボソと囁くが聞こえていたようで、ヴォルカニオンがクックッと笑う。
「そこの妖精の言う通り、いずれだ。我も気配こそ感じるが正確な場所は知らん」
「そ、そうなのか?」
「此処から離れんからな。外のことは何となくしか分からん」
それでも相当に凄いことであるのは確かだが……少なくとも、キコリにはそんなことは出来ない。
しかし、そうなると……目標の1つは案外早く果たせそうな気もする。
何しろヒントがない状態から、一気に有力な手掛かりが出てきたのだ。
問題はどのくらいかかるか分からない、といったことくらいだが……。
「一応食糧も水も問題は無いな」
「あー、行くのね。いいけど……」
「おい妖精。もっと声を出せ。羽虫と勘違いして焼いてしまうぞ」
「ヒッ」
「ヴォルカニオン……相棒を脅さないでくれ」
キコリが苦言を呈すればヴォルカニオンは楽しそうに笑う。
そう、本当に楽しそうに……だ。
「クックック……キコリ、貴様は実に良いな。他のドラゴン共であれば今のは殺し合いになっていた場面だ」
「……俺がアンタに挑んだって焼かれるだけだろ」
「そうか? 貴様もドラゴンなのだ。ならば発現の方法こそ違えど魔力では同格のはずだが?」
「俺自身の魔力なんて」
「キコリ。ドラゴンにとって保有魔力など然程問題ではない。我等は竜神に世界の魔力を思いのままにすることを許されし身。その気になれば、我等を傷つける手段などこの世に存在しなくなる」
「ごめん、分からない」
「そうか、頭が悪いな」
ヴォルカニオンの呆れたような声にキコリは「ぐう」と唸るが、分からないものは仕方がない。
「では想像しろ。火は水で消える。同じ火で消してもいいし、土をかけてもいい。風で吹き消してもいい」
「あ、ああ」
「では、我の炎をそれで消せるか?」
「無理だ」
想像するまでもない。焚火を消すのとヴォルカニオンの炎を消すのは全然違う。
だが、それは「何故」なのか? 答えとしては……持つ力が違い過ぎるからだろう。
「そう、無理だ。ドラゴンであるということはソレと同じだ。たとえば、そうだな……『ドラゴンを必ず斬り裂ける剣』があったとして、ドラゴンがその気になれば通用せん。その『必ず斬り裂く』とやらが世界の力を超えん限りはな」
「……油断しなければ死なないってこと、か?」
「端的に言えばな。まあ、ドラゴン同士であればドラゴン殺しも成立し得るだろうがな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます