貴様がその気なら
そうして辿り着いたのは、火山の存在する荒野「炎竜領域」。
ヴォルカニオンの領域であるこの場所に辿り着くと、以前とは随分と違っていた。
「……なんだ? これ」
「うげっ、まさかコレって……」
あちこちに転がっている、溶けた金属の山。
すでに冷えて固まっているが……どうやらそれらは武器や防具であるようだった。
しかし、何故そんなものがあるのか?
「まあ、理由は考えるまでもないか……」
「人間って凄いバカなの? ドラゴンに挑むとか……」
キコリとオルフェがそう言い合っていると、火山の方角からヴォルカニオンの巨体が飛んでくる。
凄まじい速度で飛来したヴォルカニオンはその場に着陸し、キコリたちをジロリと見る。
オルフェはすでにキコリの背後に隠れているが……ヴォルカニオンは一瞥しただけで興味を失ったようだ。
「同族の気配がすると思ったら貴様だったか、キコリ」
「久しぶり、ヴォルカニオン……凄いな、説明の必要もないのか」
「貴様とて慣れれば分かるようになる。そういうものだ」
そう言うとヴォルカニオンはニッと笑う。まあ……オルフェは「ヒッ」と悲鳴をあげていたが。
「まあ、祝辞は言わん。そんなに素晴らしいものでもない」
「そうなのか?」
「では聞くが……同族になってみてどうだ? 楽しいか?」
「分からない。正直、自分が『どっち』かもよく分からない」
キコリがそう答えれば……ヴォルカニオンは大きく笑う。
「ハハハハハ! で、あろうな! 今回会いに来た理由もそれだろう。我に親近感を感じるか試しに来たか! どうだキコリ、我に同族としての魅力でも感じるか! それとも嫉妬でも覚えたか!?」
「……正直、前に会った時よりも魅力が分かるようになった気はする」
「ふむ、それは気のせいだな」
キコリは正直に言ったつもりなのだが、ヴォルカニオンは一言で切って捨てる。
「我と貴様でこれだけ姿が違うのに魅力を感じるわけがないだろう。貴様のソレは『そうなるはずだ』という思い込みだ」
「ええ……?」
「しかし……貴様の危惧自体は正しい。自らの魂の属する場所を確かにしておくのは大事だ」
「ああ。だから、目的を果たしてからだけど……ドラゴンに会いに行こうと思ってる」
「そうか。それで、目的とは?」
「世界樹。恩人の身体を治したいんだ」
「世界樹か……」
ヴォルカニオンはキコリの言葉を反芻するように何かを考える様子を見せる。
その視線は、オルフェへと向けられて。
「アレは妖精と共にあるという。まあ、貴様なら……平気だろう」
「まさか、場所を知ってるのか?」
「気配は感じる。貴様がその気なら、このまま奥へと進むがいい。いずれ辿り着くだろう」
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