アレで何を守るってのよ
キコリとオルフェが防衛都市ニールゲンへと帰還した翌日。
セイムズ防衛伯の準備が整ったという知らせが来て、キコリとオルフェは防衛都市内に存在する防衛伯邸の前にやって来ていた。
「デカい家ねー……」
「こういうのはお屋敷っていうんだよ」
「どっちでもいいわよ。家は家でしょうが」
そんな会話をする程度には、視線の先にあるお屋敷は巨大だった。
門の先に見える4階建ての青い屋根のお屋敷は今まで見えてはいたが、近づかなかった場所だ。
何しろ明らかに「お偉いさんの家」なのだ。
警備も厳しく、不審者と思われたいのでもなければ好き好んで近づきたい場所ではない。
とはいえ、今回はちゃんと用事がある……というか招待されて来ているのだ。
気圧されてばかりいるわけにはいかない。
「そこで止まれ!」
「名前と目的を述べよ!」
一定距離まで近づくと、衛兵たちが武器に手をかけ誰何してくる。
これは迷宮都市では当然のことであり、怪しげな者を近づかせないためには必要なことだ。
……ということを事前にオルフェに伝えてあるため、オルフェもいきなり魔法をぶっ放すことはない。
「俺はキコリ、こっちはオルフェです。防衛伯閣下よりご招待頂きました」
「ああ、聞いている。武装は……ないようだな」
ないというか引っ込めているのだが、そんなことを説明しても面倒くさくなるだけなのでキコリは黙ったままだ。
というか、オルフェがいる時点で武装の有無など些細に過ぎる。
「通って良し」
「ありがとうございます」
開かれた門から庭へと入ると、オルフェはくだらなそうに溜息をつく。
「くっだらな……アレで何を守るってのよ」
「ああいうものなんだよ」
実際、距離をとって誰何したところで魔法を使う暴漢が相手なら遠距離から狙撃できる。
門の前に立つ衛兵は一定以下の戦力に対する威圧であり、犯罪を未然に防ぐ為のものなのだろう。
まあ、その辺りはキコリたちには関係がないのだが。
門を抜けると、執事らしき男性が待っていてキコリたちに軽い礼をする。
「ようこそお出でくださいました。防衛伯閣下がお待ちです」
「はい、よろしくお願いします」
「此方へ」
扉を潜り屋敷の中に入ると、巨大なホールがキコリたちを出迎える。
飾られた鎧は実用にも耐えそうな程に立派な造りだが……実際にどうであるかは分からない。
ピカピカに磨かれた鎧は綺麗な装飾もされていて、明らかな「飾り用」にも見えたからだ。
しかし、持っている槍は妙に鋭い。いざという時用であるのかもしれない。
そんなことを考えながら、キコリたちは執事の後について屋敷の中を歩いていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます