なら跳べばいい
「いや、それが……どんな効果があったのか、まだよく分かってないんだ」
「えー? キコリってばドラゴンなのに感覚ニブニブなのぉ? ダサぁい」
「ダサ……いや、まあ。あんまり鋭敏ではない、かな」
「ちょっと自分を下げ過ぎないようにするとこが超ダサぁい。ダサダサだぁ」
「凄い口悪いな君……」
「皆こうだよぉ?」
そういえばオルフェも結構口悪いよな……とキコリは思い返す。
もしかすると妖精は皆こんな感じなのだろうか、と思うと何とも言えない気持ちになってくるが……まあ、獣人の国で向けられた本物の悪意に比べれば、どうということもない。
セランが口が悪くてもキコリを嫌っているわけではないことが分かるからだ。
「セラン。良かったら俺に教えてくれないか?」
「えー、そんなこと言われてもなあ。誰かに飲ませたのなんか初めてだしぃ。そもそも作るのも初めてだよぉ?」
「そんなものを俺に……」
「だってドラゴンなら平気でしょお?」
妖精の妖精たる所以と、オルフェは妖精の中では結構真面目だったんだな……という想いが混ざり合い、キコリは微妙な表情になるが、まあ結果として問題なかったのだからいいだろうと思い直す。
「それに大丈夫だったんだから、何か変わってるはずだよぉ?」
「何か……」
「少なくとも見た目は変わってないし、何か『今まで違うな』ってことないのぉ?」
それなら、ある。先程の妙に軽く、素早く跳べた感覚。
あれがキコリが得た能力ということなのだろうか?
「それなら、さっき上から跳んだ時に感覚がいつもよりずっと軽かったんだ。あれがそうなのか?」
「あ、それだねぇ。『フェアリーマント』って他の連中が呼んでるやつだと思うよぉ?」
「他の連中?」
「妖精の星は人間とかがたまに持ってるんだよねぇ。見たら全力でぶっ殺せって教わってるけどぉ」
武器、防具、アクセサリー……そうした物に着けることで特殊な能力を得るらしいのだが。
人間が持っているモノは妖精を襲って手に入れたものだから、着けている奴を見つけたら殺せと妖精の間で申し送りがされているらしい。
「……大丈夫か俺? 他の場所の妖精に襲われたりしないか?」
「ドラゴンは襲わないよぉ。オルフェもいるしねー」
「そういうものか……」
「で、フェアリーマントだけどねえ。なんか身体が軽くなるんだってぇ。便利だねぇ」
なんだか説明がふわっとしているが、要は身体が軽くなったが故にジャンプも楽になった……ということなのだろうか?
力がそのままで跳ぶ物体の重さが軽いなら、確かに説明はつく……気がする。
試しに拳を空中へ繰り出してみると、普段の勢いよりも遥か速いジャブになる。
「何やってるのぉ?」
「どのくらい身体が軽くなったかなって」
「なら跳べばいいんじゃないのぉ?」
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