妖精特有の能力
「……ひどい目にあった」
キコリが起き上がると辺りはもうすっかり暗くなっていて、オルフェがふわふわ浮きながら寝ているのを見つける。
妖精の星。自分が飲み込んだモノのことを思い出しながら、キコリは小さく息を吐く。
「いや、なんていうか……やっちゃったな」
相手が妖精……オルフェの仲間だから無警戒になっていたのか、それとも自分自身が結構救いようのないアホなのか。
両方という気もするが、まあ結果として飲んでいた気もするのであまり変わりはしないだろうか?
それより気になるのは、飲んだことにより「得た」ものについてだ。
妖精特有の能力を付与するという話だったが、そうであるならばキコリにも何かが付与されているはずだ。しかし、何が付与されたというのだろう?
「妖精特有の能力、か。俺にも何か付与されたはずなんだが……」
それにしても、本来は何か道具に組み込むものだったんじゃないかと思わないでもないが……まあ、キコリは普通の道具に関しては持つ意味があまりないので問題はないだろう、などと考えていた。
「……妖精特有の能力って、なんだ……?」
飛ぶ。違う、別に妖精特有というわけでもないだろう。
小さい。違う、こんなことを言っただけでオルフェに怒られそうだ。
魔法が得意。これも違う気がするが……。
「……」
オルフェを夜に起こすのもはばかられて、キコリは入り口へとそっと移動する。
妖精の家には扉など無いので、入り口から出るとなれば下に落下する必要がある。
キコリは特に躊躇うこともなく下へと飛びおりて。
思ったよりもずっと軽い感覚に目を見張る。
自由落下ではなく、羽でも生えて移動したかのような柔らかく素早い跳び方。
着地時の衝撃も重たいものではなく、非常に軽いものだった。
「なんだ? これ……」
思わず背中に触れてしまうが、当然羽など生えてはいない。
キコリが疑問符を浮かべていると、妖精の1人がフワフワと飛んでくる。
「あー、ドラゴニアンだあ。こんな夜に何してるのぉ?」
「君は……『ねー』の子だっけ」
「すっごい覚え方だぁ」
あははー、と妖精は笑うが……大体それしか言わないのでキコリとしてはそういう認識になるしかない。
「そういや自己紹介もしたことなかったな。俺はキコリだ」
「私はねー、セランだよぉ」
「そっか。よろしく、セラン」
「うんうん。で、ドラ……キコリは何してたのぉ?」
「君たちから貰った『妖精の星』の効果を確かめようかなって思ってた」
「そっかぁ。凄いでしょお?」
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