大体予想つくけど
「えー、またどっか行くの!?」
「もっとゆっくりしていきなよ!」
「ねー!」
今まで隠れていたのだろうか。妖精たちが窓から顔を出して叫んで、オルフェが思い切り睨みつける。
「ちょっと、いつからそこにいたのよ」
「ずっといたよ?」
「いたよね」
「ねー」
頷きあう妖精たちに、オルフェはうるさそうに手を振る。
「どっか行きなさい。あたしたちは暇じゃあないのよ」
「物好きだよねー、オルフェも」
「はあ?」
首を傾げる妖精の1人にオルフェは不機嫌そうな声をあげる。
「ドラゴニアンに付き合って人間の町行ってるんでしょ?」
「私人間臭いとこムリー」
「ねー」
「そんなもん、あたしの勝手でしょうが」
オルフェが溜息をつけば妖精たちは顔を見合わせて「そうかもね」と頷きあう。
「じゃあ、さっさとどっか行きなさい」
「うん、用事終わったらねー」
「は?」
妖精の1人が部屋の中に入ってくると、キコリの目の前まで飛んできて何かを差し出す。
「あげる!」
「え?」
「変なゴブリン倒したでしょ? そのお礼!」
妖精が差し出すソレは、親指程の大きさの青い半透明の玉……に見える。
何やら尋常ではなく濃い魔力を感じるが、一体何なのだろうか?
「あ、ありがとう。でもコレって?」
キコリが玉を受け取ると、妖精はアハハッと楽しそうに笑う。
「それはねー、『妖精の星』だよ!」
「星?」
「うん。たくさんの妖精で魔力を捏ねると出来るんだー」
「100回に1回くらいは成功したりしなかったりするよ!」
「ねー」
「……凄い貴重品なんじゃないか?」
いつの間にか他の妖精たちも部屋の中に入ってきているが、リーダーらしき妖精がふふーん、と自慢気に胸を張る。
「ドラゴニアンはオルフェと仲良くて、私達の恩人だから特別だよ!」
「感謝の証!」
「ねー」
「あ、ありがとう。それでこれ……どうしたらいいんだ?」
「ドラゴニアンなら飲めばいいんじゃない?」
言われてキコリは玉を飲み込んで……オルフェが「あーあ」と声をあげる。
「え? なんか拙かったか?」
「いや、あたしも平気とは思うけど……普通は飲まないわよ、それ」
「は?」
「そいつが言ったじゃない、魔力を練ったって」
その意味を考えて……キコリは体内で何かが暴れているのを感じた。
「うっ!? なんだこれ……!」
「やっぱり飲んで正解だね!」
「成功だー!」
「ねー!」
きゃっきゃと喜んで飛び回る妖精たちをウザそうに見ると、オルフェはキコリの顔をじっと覗き込む。
「まず要点から説明するとね。それは妖精特有の能力を外部に付与するものなのよ」
「ど、どういう……」
「まー、アンタが何を得るかは大体予想つくけど、とりあえず……おやすみ?」
体内で暴れ回る魔力の衝撃にキコリは昏倒し……起きたのは、夜も更けた頃であった。
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