それしかないなら

「あ、目が覚めた!」

「覚めたよ!」

「ねー」


 キコリが目を開けると、妖精たちがキコリの顔を覗き込んでいた。


「……おはよう?」

「おはよー!」

「おはよ!」

「おっはよー!」


 何が楽しいのか笑いながら妖精たちは飛び回り、そのまま何処かへ飛んでいく。

 訳が分からない。分からないが……キコリは、ゆっくりと身体を起こす。

 どうやら此処は新妖精村のオルフェ……とキコリの家であるようだが、そのオルフェは何処にいるのか。

 考えながら周囲を見回して、横に座っている「誰か」に驚く。


「うわっ!?」

「ようやく起きたわね」


 顔はオルフェに似ている。似ているが……明らかに人間サイズのその姿に、キコリは思わず目をこすって。

 そんなキコリを見てオルフェは満足そうにフフンと笑うと、光に包まれ元の姿……というよりもサイズに戻る。


「え、ええ……? 何だ今の? 魔法?」

「あの後出来るようになったのよ。アンタがブレイクで砂みたいにしたアイツの欠片がちょっとあたしの中に入ったから、その影響かもしれないわね」

「大丈夫なのかそれ?」

「知らないわよ。でも見てみなさいよ、アレ」

「アレ?」


 キコリがオルフェの指し示す方向……窓の外を見ると、妖精たちが人間サイズになったり元の姿に戻ったりして遊んでいる。


「砂のほとんどは風ですっ飛んでいったけど、残ったのを回収したらしくて。で、アレよ。デカくなるのが面白いらしいわよ」

「ええ……いいのか? 出自も作成方法も危ないの塊だろ」

「アンタ、アイツ等に『面白そう』以外の行動基準があると思ってんの?」

「……」

「何か言いなさいよ」

「いや……んー……」

「言えコラ」

「いててててて」


 突っつかれてキコリは悲鳴をあげるが、まあ妖精が良いなら良い……のだろうか?


「それより、此処にいるって事は……彼女達が助けてくれたのか?」

「ま、そういうことね。人間どもが来る前に諸々回収して撤退したってわけ」

「そうか……」


 まあ、転生ゴブリンの残骸にそんな効果があるのなら放置するわけにもいかないだろう。

 新妖精村に回収して貰えたのは、むしろ良いことだ。

 良いこと、なのだが。


「えーと……オルフェ?」

「なによ」


 自分を睨んでいるオルフェに気付き、キコリは居心地の悪い思いをしながらも向き直る。

 正直、心当たりしかない。


「無茶したのは悪いと思ってる。ごめん」

「でも次もやるでしょ?」

「ああ、やる。それしかないなら躊躇わない」


 躊躇せず答えるキコリに、オルフェは大きく溜息をつく。


「……ま、やりなさいよ。フォローできる範囲でならやってあげるから」

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