ドラゴンとしての特性
ヒュンヒュンヒュン、と。爆発の煙収まらぬ後方でおかしな音がする。
何かは分からない。分からないが……キコリはオルフェを抱えたまま横へ跳ぶ。
直後、飛んできた何かが木を一撃の下に砕き折る。
「石……投石!?」
投石と思われる攻撃で殺されていたゴブリンのことを思い出しながら、キコリは斧を構え向き直る。
再度響くヒュンヒュンという音。煙の晴れた先では……転生ゴブリンが何かを振り回しているのが見えた。
革と紐……だろうか? そのような何かで作られた器具を振り回すゴブリンが石を放つ。
投石具。その詳細は分からないが、凄まじい速度で放たれた石は避けたキコリの近くを通り過ぎ、別の木を破壊する。
「アイスアロー!」
オルフェの放った3本の矢がゴブリンへ向かって飛び、しかしその表面で弾かれる。
そして……その表面が一瞬ではあるが僅かに輝いたのを、キコリは見た。
「今の光は……!」
「たぶん魔石の魔力よ! 濃すぎる魔力で無意識に結界を張ってるんだわ!」
「どうすればいい!?」
「効くまでやる!」
「いつも通りだな!」
キコリは両手に斧を呼び出し、ミョルニルの電撃を纏わせる。
「喰らえ……っ!」
投げた斧はやはり弾かれ、電流もその表面を滑る。
「ボルテクス……スフィアッ!」
続けてオルフェの放った巨大な電撃球が転生ゴブリンに命中し、無数の電撃が襲い……しかし表面を滑っていく。
分からない。どのくらいまでやれば効くのか分からない。
しかし、そもそもアレは。
あの目から不気味な光を放つ転生ゴブリンは……「生き返った」のだろうか?
キコリを執拗に狙って放たれる石を避け、斧を投げて。
やがて周囲が瓦礫と化し始めた頃……転生ゴブリンの動きが止まる。
投石具に、石が補充されなくなったのだ。
使い切ったのだろうか、投石具を捨てると何を考えたか、素手でキコリへと突進してくる。
「ガアアアアアアアアアアア!」
「ミョルニル!」
キコリは片手にだけ斧を構え、電撃を纏わせる。
凄まじい速度で地面を滑るように走る転生ゴブリンはキコリに拳を振るい……輝くその拳が、迎撃するキコリの斧を砕く。反撃のように流れ出た電撃も転生ゴブリンの表面を滑って。
しかし、そのゴブリンの止まらぬ拳を避けながら、キコリの手の平が転生ゴブリンの頭へと添えられる。
魔力を、集中して。
「ブレイク」
ゴブリンを覆う結界がブレイクをも弾こうと輝いて。
しかし、ドラゴンとしての特性を使い外部から存分に取り込んだキコリの魔力を徹底的に籠めたブレイクは……その防御を貫き、転生ゴブリンの頭部を微塵に崩壊させた。
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