くだらないっていうのよ
探す。探し、探して……倒れこんでいるその姿を見つけたのは、あの転生ゴブリンの集落のあった場所だった。
前回会った時とは何も変わっていない、ゴブリンそのものな姿。
まだ魔石を食べていない……のだろうか?
しかし、倒れているのは何故だろうか。何かの罠?
いや、そんな様子でもない。地面を引っ掻き倒れたその姿は……まるで毒でも飲んだかのようだ。
「……ウインドショット」
試しにオルフェが風の魔法を放てば、転生ゴブリンは弾かれて力なく転がっていく。
死んでいる。間違いなく死んでいる。
しかし……何故? 何故転生ゴブリンは死んだのだろうか?
考えて……キコリは「あっ」と声をあげる。
「……魔力超過現象」
「そういうこと、ね」
オーバーマナ、魔力超過現象。
キコリが以前ゴブリンジェネラルと戦った際、チャージのし過ぎで倒れた時のもの。
自分の魔力容量を超える魔力を外部より吸収することによる、過剰魔力が肉体機能を破壊する現象。
そして魔石とは魔力の凝縮体だ。
それを過剰に摂取すればどうなるかは……目の前に実例がある。
進化も変異もすることなく、転生ゴブリンは死んだのだ。
「……あっけないな」
「くだらないっていうのよ、こういうのはね」
しかし、これでよかったのかもしれないとキコリは思う。
魔石で自分の力を超えるような何かを得られるなどという上手い話はない。
いや、正確には多少は得られるのかもしれないが……過剰に得るのは無理なのだろう。
「まあ、それでも念の為っていう言葉もある。消し飛ばしておくか」
「賛成。じゃあ早速……ブラストショット!」
オルフェの放った魔法弾が着弾と共に爆発を起こして、転生ゴブリンの死骸は当然のように吹っ飛んで……はいなかった。
爆発の中、転生ゴブリンは立ち上がり……視点の合わない瞳がギョロギョロと動いていた。
だらしなく開いた口からは「ゲ、ゲガ……」という呻き声のようなものが漏れている。
(生き返った……!? 何か、何かヤバい!)
「ミョルニル!」
キコリは迷わず斧に電撃を纏わせ投擲する。
無抵抗の転生ゴブリンに斧は叩き込まれ、電撃がその場に炸裂する。
するが……当たっていない。違う。当たってはいる。いるが……。
「効いてない……?」
そう、オルフェの言う通り効いていない。斧は外皮に弾かれ、電撃は単純に効いていない。
ゴブリンでは有り得ない、その防御力。ならやはり進化していたのだろうか?
だが、あれは。何か……とてつもなく、嫌な予感がする。
「オルフェ、アレを!」
「ええ!」
「「グングニル!」」
キコリとオルフェは同時にグングニルを放ち、直後にキコリがオルフェを抱えてその場を高速離脱する。
背後で起こる大爆発の中……嫌な感覚は、微塵も消えてはいなかった。
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