少なくともあたしは
「確かにね。さっきのゴブリンの死骸といい……妙なことが続いてるわ」
「これもあのゴブリンの仕業、てのは考え過ぎか?」
「んー……まあ、最悪の可能性は常に想定すべきね」
とはいえキコリにもオルフェにも、どうやれば「ビッグラットの異常進化体『らしきもの』」を用意できるのかはサッパリ分からない。
そんな方法はないかもしれないし、あの転生ゴブリンは何も関係ないのかもしれない。
このおかしなモンスターは、全く別の案件なのかもしれない。
謎ばかりが増えて奇妙な居心地の悪さを感じるキコリだが、今すぐにどうにか出来る問題でもない。
「ああ、本当に嫌だな。何もかも斧で真っ二つに出来たら楽なのに」
「やってみる? その辺を全部焼き払えばあのゴブリンもこんがり焼けるかもしれないわよ」
「いや、やらない」
「へえ?」
「そんなことしたら、妖精に迷惑かかるだろ」
キコリがそう言えば、オルフェはニヤッと笑う。
「そうね。そのくらい考える頭は残ってて嬉しいわ」
「なんだよそれ」
「べっつにー。全部真っ二つとかいうから、脳みそ消えたのかと思って」
「ひどいな……」
しかし、頭をリセット出来たとはキコリは思う。
まさか焼き払うわけにはいかないが、あの転生ゴブリンを炙り出すには森をくまなく探すしかない。
このネズミ型モンスターの件が転生ゴブリンの仕業であるなら、森の何処かに居るのは間違いないのだから。
「行こう、オルフェ。此処に残っても何も無さそうだ」
「そーね」
そうして森の中を再度探索すれば、ゴブリンたちによる襲撃を何度か受けるが……時折、あの投石で殺されたと思われる、魔石を抜かれたゴブリン、そして角兎の死骸も見つける事になった。
「……角兎だ。魔石を抜かれてるな」
「そうね。別に新しい発見でもないでしょ」
「肉を回収してない。やっぱり冒険者じゃないな」
売れると聞く前のキコリもそうだったが、角兎の肉は売れる。
だから角兎を倒して肉を回収しないのは余程の金持ちか、以前のキコリのような物知らずだけだ。
しかし、こうして見ると角兎の角は……。
(なんだかさっきのネズミの角に似てるな……?)
気のせいかもしれない。しれないが……何かが、キコリの中で引っかかった。
「なあ、オルフェ」
「何よ」
「普通のネズミが角兎の魔石を食べたら、さっきのネズミみたいになったりすると思うか?」
「はあ?」
オルフェは何を馬鹿な、と言いかけて……考える。
魔石を食べるなど、普通はしない。一目見て本能的に有害と察するからだ。
しかし、もし。もしそれでも食べたなら。
「……分かんない。少なくともあたしは魔石は魔力の凝縮体って認識よ」
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