食べる為だったりしてな
あるいはオークならば投石でゴブリンを殺す事も可能だろうか?
以前オークが森まで来ていたことを思えば、有り得ない話ではない。
しかし……キコリは別の可能性を考えてしまう。
「あのゴブリンがやったのか……?」
「アイツが? 仲間のゴブリンを?」
「仲間意識無さそうだったろ」
他の仲間に便利に使われていたようだし、それに対する不満もあって、1人で逃げる脱出口も用意していたくらいだ。そういうことをやってもおかしくはないとキコリは考えていた。
それに、何よりも。
「オークがゴブリンの魔石を欲しがったんだとしたら、もう少し凄惨な感じになってると思うんだよな」
「あー、まあね」
どちらかというと綺麗な、目的だけを手早く果たした死骸だ。
殺され方が石ではなく他の武器なら、キコリも「冒険者の仕業」と判断しただろう事は間違いない。
「でもゴブリンが魔石を欲しがる理由って何だ?」
「知らないけど。ロクな理由じゃない気はするわね」
どのみち、この近くにはもう居ないだろう。
あの頭の回るゴブリンが、同じ場所にいつまでもいるとは思えない。
「……魔石、か」
正直な話で言えば、今のキコリは魔石を「食べる」ことが出来る。
以前魔石を美味しそうだと思ってしまってから、試しに舐めてみたことがあるのだ。
そうすると体内に魔石の魔力が回り、多少の充足感があったのだ。
それ以来試したことはない。ないが……そういう目的の可能性もあるだろう。
だから、キコリはそう口にしてみる。
「食べる為だったりしてな」
「だとしたら、もうゴブリンじゃないわよ」
オルフェから返ってきたのは、そんな答えだ。
「魔石っていうのは魔力の凝縮体よ? あたし達妖精だってそんなもの食べないってのに。ゴブリンなんかアレよ。その辺の変な物食べて生きてるような連中なのに魔石なんか食べたら死ぬっての」
「そういうもの……か? 俺はいけたけどな」
「アンタいつの間に」
「前にちょっと気になって……いてっ!」
「なんでも口にしてんじゃないわよバカ!」
バシバシとオルフェにキコリは叩かれていたが……やがて疲れたのか、ぜえぜえ言いながらオルフェは「とにかく!」と声をあげる。
「あのゴブリン見つけりゃ話はすぐ済むのよ。行くわよ!」
「あ、ああ」
再び探索に戻るキコリたちだったが……破壊音と人間の悲鳴のようなものが聞こえてきたのは、その直後のことだった。
「う、うわあああああああ!」
「なんだこいつ! ぐあっ!?」
木々の薙ぎ倒される音、そして響く破壊音。
明らかな異常に、キコリたちは迷わず走り出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます