これって魔法か?

 英雄門へ向かって歩いて行けば、自然と人通りが多くなる。

 普人、獣人、エルフ、ドワーフ……色々な人々が歩いているが、恐らくはその全てが冒険者なのだろうと思われた。

 相変わらずチラチラと視線が向けられてはいるが、話しかけてはこない。

 まあ、もう理由は充分に分かっている。

 だからこそ気にせずに歩いて……英雄門近くの広場へ行けば、いつもと変わらず露店がたくさん並んでいて。


「妖精も大好き、木の実だよー! 定番からレア物まで揃えてるよ!」

「森の素材を使ってエルフの技術で染めたマントだよー!」

「炎への耐性を高めた装備ありますよ! 見てってよ!」

「妖精モチーフのアクセサリーあるよー!」

「名剣揃えてるよ! ドワーフの鍛冶師の鍛えた逸品揃い!」


 ……何やら、ちょっと様子が変わっていた。

 妖精がどうの、という呼び込みが増えている。


「あー……外で食事した時の、見られてたからな」

「別に木の実が好きってわけじゃないんだけど」

「そうなのか?」

「あえて食べるならってくらいかしらね」


 そもそも食事とかする必要ないっての、とオルフェは吐き捨てるが……まあ、人間と交流がほぼないのだから誰も分からないよな、とキコリは思う。

 そもそも木の実を持っていくと皆食べるのだから、嫌いというわけでもなさそうだが……。


(いや……たぶん好きだよな?)

「何考えてるか丸わかりの顔してるわよ」


 オルフェに睨まれてキコリはサッと視線を逸らして。

 英雄門を抜けて森に入っていけば、それなりの数の冒険者が「冒険者の道」を外れて探索しているのが見える。

 何を探しているかは……まあ、よく分かるが、妖精に出会っても「運よく」ではなく「運悪く」だし、かなりの確率で殺されそうなので会わない方がいいと思うのだが……それをキコリが言っても説得力はないだろう。


「ゴブリンだ!」

「回り込め! そっちだ!」


 あちこちから戦闘音も聞こえてくるが、確かにゴブリンが増えている。

 その中にはあの転生ゴブリンもいるのだろう。しかし、アッサリ殺されているとも思えなかった。

 森の中を歩き、進んで。何度かゴブリンとの戦闘もこなしながら進んでいくと、キコリたちは放置されたゴブリンたちの死骸を目にする。

 魔石を抜かれたと思われるそれらは、一見すれば冒険者に倒されたゴブリンに見えるが……転がっていたモノにキコリは気付く。


「石……?」


 状況を見る限り、投石で殺されたように見える。

 見えるが、石を投げてゴブリンを殺すとなると、相当なパワーが必要なはずだ。

 キコリも投石で追い払うことは出来ても殺すとなると自信がない。


「オルフェ、これって魔法か?」

「違うわね。魔力を感じないもの」

「そう、か……となると、本当に投石で倒したのか」

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