実際どうしたものか?
大神エルヴァンテの神殿。
そこに辿り着いた時、キコリは少しばかり微妙な表情になる。
「何よ。この神殿に何かあるの?」
「この神殿に何かあるってわけじゃないんだけどな……」
キコリは頬を掻きながら、イルヘイル……獣王国の防衛都市の神殿を思い出す。
「ほら、あっちの国だと合祀だっただろ?」
「んー? ああ、色んな神様祀ってるんだっけ」
「ああ。で、こっちは大神エルヴァンテの神殿、なんだよ」
「あー……」
キコリの言いたいことを理解して、オルフェはうんざりしたような表情になる。
「そういうことね。めんどくせーわねー、人間」
「まあな……」
いつだったか、クーンが人間は大神信仰が強い的なことを言っていた記憶があるが……こうして獣人の国の神殿と比べてみると、その意味がよく分かる。
他の神々を崇める神官との交流も積極的に行っているとのことではあったが、合祀にはなっていない辺りに限界を感じてしまうのだ。
まあ、その辺りの詳しい事情に首を突っ込む気はキコリには一切ない。
というか、突っ込んだところでどうにか出来るわけでもない。
「ひとまず、その辺の事情は置いとこう。今回は祈りに来たわけでもないしな」
今回のキコリの目的は言語についてだ。
あのノートに書かれていた文字に記載された言語の解読に来たわけだが……そんなものに協力してくれと言ってしてくれる程、神官も暇ではないだろう。
セイムズ防衛伯のペンダントを見せればあるいは協力してくれるかもしれないが、こういったものは乱用していいものでもない。
「どうやって協力してもらうかな……」
「あの防衛伯とかいうオッサンのペンダント使えばいいじゃない」
「アレはこういう時に使うものじゃないよ。防衛伯閣下の名前で押し通るには緊急性ってやつがないしな」
「そういうもんなの?」
「ああ」
身の危険をどうにかするわけではない時に使えば、セイムズ防衛伯からの好感度は下がるだろう。
信用もそうだが、こういったものは目減りする。使いどころは考えないといけない。
(……まあ、いざって時に役に立たなかったけどな)
イルヘイルでのことを思い出しながら、キコリはふうとため息をつく。
とにかく、それ以外の方法で神官に交渉しなければならない。
だが……実際どうしたものか?
キコリは考え、以前此処に来た時に会った神官のことを思い浮かべる。
確か……あの神官の名前は。
「イドレッドさん……だったか?」
随分と情熱のある神官だったことは覚えている。
彼ならあるいは協力してくれるのではないだろうか?
そんなことを考え周囲を見回すと、キコリは見覚えのある姿を見つけた。
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