たぶん色々分かると思います

 それから色々と話をしたが、アサトと名乗った男については最低限のことしか話さなかった。

 転生者らしき人間がどうのという話をアリアに今話してもどうしようもないというのもある。

 そもそも、その話をするとキコリの記憶に関する話もバレそうでもあった。

 ならばアリアの心を余計なことで乱しても仕方がない、と。キコリはそう判断していた。

 

「ふーむ……そのキコリに絡んできたっていうアサトっていう男。それっぽいのが地下の販売所にも来てましたよ」


 だから表面的な「ちょっと絡まれた」ことしか話していないのだが、アリアもどうやら心当たりがあったようだ。


「結構高いポーションを何本も買っていきました。財布に余裕があるみたいですね」

「へえ……」

「まあ、金級冒険者みたいですし。稼いではいるんでしょうね」


 頷くアリアは、ふと気づいたようにキコリへと笑いかける。


「ま、全然好みじゃないですけど」

「聞いてねーわよ」

「会話らしい会話はしてませんけど。かなり性格悪そうですよ、アレ」

「はあ……」


 オルフェがどうでも良さそうな顔をしているが、キコリもあまり関わる気はなかった。

 たぶんこちらが転生者だと思って絡んできたのだろうし、そうではないと判断した以上はこれ以上絡んでくることもないだろう。


「キコリが獣王国に行ってる間、色んな人が出入りしましたけど……まだ同様の状況は続いてます。他にも変な人が出てくるかもですけど、注意してくださいね?」

「分かりました」

「よろしい」


 キコリがいない間にセイムズ防衛伯が動いてくれていたはずだが、まだ問題は残っているということなのだろう。

 まあ、人間の問題であるのだからどうしようもないのかもしれないが……。

 そこでふと気になって、キコリはアリアに聞いてみる事にした。


「……あの、色んな人って……面倒な人ってことですか?」

「ええ、勿論です。大変だったんですよ」


 何処かの貴族の遣い。キコリを怪しげな仕事に従事させる気満々で、セイムズ防衛伯に叩きだされたらしい。

 怪しげな商人。妖精の話を聞いて売ろうとして、ついでにキコリもなんか騙して売ろうとやって来て、すでに捕まえて処理済であるらしい。

 その他、オルフェを買おうとやってきた馬鹿がたくさん。立場にモノを言わせてオルフェを奪い取ろうとした馬鹿もたくさん。その他オルフェ関連で何人か。

 オルフェが聞いていて「うわぁ……」とドン引きしている。


「……えーと。ほとんどオルフェ関連のような」

「そうですよ? 『少年と妖精の物語』なんて歌を吟遊詩人があっちこっちで歌ってるらしいですけど……キコリにも話しましたよね」

「ええ、なんか妖精と心を交わしてどうこうって」

「1回聞いてみるといいですよ。たぶん色々分かると思います」

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