謎の言語
「とにかく、この場所は壊しとかないといけないな」
「そうね。ゴブリンの巣なんか放置できないし」
そんな話をしながら、キコリは積んである木箱の中のガラクタに触れる。
大したものは入っていない。ボロいナイフや革袋、手斧なども入っている。
道具入れ……とうよりは本当にガラクタが多い。
「ゴミね」
「ああ。でも……逆に気になるな」
此処があの抜け目のないゴブリンのテントだとして、明らかにガラクタじみたものを大事にとっておくとも思えない。
もしかすると、何かの偽装……他のゴブリンがパッと見て興味を無くすように仕向けた可能性はある。
考えると……キコリは斧で一番上の木箱を薙ぐ。
ガシャンッと地面に落ちる木箱とキコリを見比べてオルフェが「え、何?」と驚いた様子を見せるが……何かを見つけて「むっ」と声をあげる。
「何これ。壊れた木箱から……針? 二重構造になってんのかしら」
「罠だろ。たぶん、木箱をどかそうと持ち上げたら針が出てくるんだろうな。毒が塗ってあるかは分からないけどさ」
「ああ、そういう……確かに悪知恵が凄いわね」
「たぶん本来は何か面倒な手順がいるんだろうな」
まあ、さっきそういう時間があったとも思えないから……罠の箱の下にある木箱に何かがある、はずだが。
念のため次の箱にキコリは斧を叩きつける。
バキッと音をたてて割れた蓋を斧で弾き飛ばし、仕込んであった針に気付く。
「……こっちにも針か。薄い板を張り付けて本命を誤魔化す……ほんとに頭いいな」
そうまでして守りたかった物とは何か。
キコリは箱の中を覗き……樹皮の束らしきものを見つける。
穴を開け、何かの植物のツルを通して纏めているようだが……要は、手製のノートであるようだ。
キコリの分からない文字の書いてあるソレは、ゴブリン語……なのだろうか?
そう、キコリはそう判断した。
だがキコリに異世界の記憶があるならば理解できただろう。
それはキコリの知っている「異世界」の言語であると。
その最初の一文にはその言葉でこう書かれていたと。
―俺は生まれ変わったらしい―
だが、キコリには読めない。異世界の記憶などほぼ消え去っているが故に。
残っていても読めたかは分からない部分もあるが……その「謎の言語」で記されたノートを捲っていると、オルフェも横から覗き込む。
「……何語? これ」
「ゴブリン語じゃないのか?」
「アイツ等にそんな文化があるとも思えないけど……持って帰るの?」
「ああ。町で調べたら読めるかもしれないしな」
荷物袋にノートを入れると、キコリはテントを出て。
「じゃ、ぶっ壊すわよ」
「ああ、頼む」
オルフェの魔法が、ゴブリンの「巣」を跡形もなく吹き飛ばした。
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