オドオドしたゴブリン
(統一……そうだ。統率じゃない。統一されてる)
「ミョルニル」
「アイスアロー」
キコリは電撃纏う斧を投擲しゴブリンを灰塵とし、オルフェは氷の矢を数本放ちゴブリンたちを貫いていく。
瞬間、ゴブリンの1体が悲鳴をあげて逃げ出し……それに触発されるように他のゴブリンたちも蜘蛛の子を散らすように逃亡していく。
「……やっぱりだ。アイツ等、『上』には何も居ないんだ」
「そーね。調子乗ったザコってだけだわ」
何か自信を持つような事があって、それ故に気が大きくなっていた。そんなイメージだ。
しかし、それは何なのか?
戦術? 装備? それとも、その両方だろうか?
使いこなせているようには微塵も見えなかったが、それで何か上手くやった経験があるのかもしれない。
「オドオドしたゴブリン……か」
「さっきの話? まあ、確かに怪しいわね」
「ああ」
頷きながら、考える。もしかして、もしかして……だが。
その「オドオドしたゴブリン」が他のゴブリンに教えたのだとしたら?
それが狩りか何かで上手く機能して、それでゴブリンの気が大きくなったのだとしたら。
しかし、戦術にせよ装備にせよ、ちょっと頭が良い程度でどうにかなる問題だとは思えない。
(だとすると……前世持ち……?)
充分有り得る話だ、とキコリは思う。何も前世の記憶を持つ者が人間にしか生まれ変わらないという法則があるわけでもないだろう。ゴブリンに生まれ変わる者だっているかもしれない。
そうした者がゴブリン社会の中で、そうした知識を使ったとしたら……こうなるのではないだろうか?
まあ、「オドオド」という点を考えるに、あまりゴブリン社会のカースト上位にいるとも思えないのだが。
「……まあ、あまり悩んでも仕方ないか。とにかく住み家を探そう」
「アイツ等、ほっとくとすーぐ巣作るのよねえ」
オルフェは巣……まあ、他の妖精もそう表現したが、ゴブリンの住み家は「巣」と呼ばれるに相応しいものが多いらしい。
上位種のゴブリンに統率された場合は別だが、そうでない場合は非常に原始的な生活を営むとされている。
しかし、だ。「オドオドしたゴブリン」がある程度の知識を持っているなら……そんな生活には甘んじないかもしれない。
少なくとも、小屋くらいは建てている可能性もある。
そう考えたキコリはオルフェと共に森の中を進み……布を木に括りつけたテントのようなものを見つけた。
テントは幾つかあるようだが……その中央は草などが刈られ、焚火の跡もあった。
そして、広場のように整えられたその空間。
そこには、鍋の中にどんぐりを入れているゴブリンの姿があった。
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